第30回管理栄養士国家試験問題~臨床栄養学~
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Q115
- 患者の栄養管理に関する記述である。誤っているのはどれか。1つ選べ。
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- 栄養管理により、疾患の治癒が促進される。
- 栄養管理により、入院期間の短縮が期待される。
- クリニカルパスには、栄養指導を含めない。
- 栄養サポートチームは、患者のQOLを優先する。
- インフォームドコンセントが必要である。
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クリニカルパスは食事指導も含む。クリニカルパスは疾病・検査ごとに検査・処置・指導・看護・食事等の内容を時間順にまとめた表(診療計画表・パス表)。医療従事者だけでなく、患者も治療経過の情報を共有。更に実施後、評価・改善が行われるので、患者の最終目標(QOL)を目指し、医療内容の最適化、入院期間の短縮が図られる。
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Q116
- 寝たきりの患者の身長を推定するための計測項目である。正しいのはどれか。1つ選べ。
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- 頭囲
- 上腕周囲長
- ウエスト周囲長
- 下腿周囲長
- 膝下高
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(1)頭囲は脳の大きさを反映。(2)上腕周囲長はエネルギー摂取量を反映するので体脂肪量と筋肉量(栄養状態)の指標。(3)ウエスト周囲長は内臓脂肪型肥満の指標。(4)下腿周囲長はふくらはぎの太さであり骨格筋萎縮の程度・体重等の指標。
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Q117
- 経腸栄養補給法が禁忌となる患者である。正しいのはどれか。1つ選べ。
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- 口腔がん術後
- 食道がんによる通過障害
- 胃食道逆流症
- 下部消化管完全閉塞
- 脳卒中後の意識障害
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(1)口腔がん術後においても経鼻管等の経腸経管栄養法が用いられる。腸は生体の防衛機能司っている為、腸管が一部でも機能していれば経腸栄養を用いる(例外:完全腸閉塞・消化管において栄養剤の吸収が全く出来ない場合等)。(2)食道の通過障害があっても胃瘻・空腸瘻等の経腸経管栄養法が用いられる。(3)胃食道逆流症は誤嚥性肺炎等を引起す為経腸栄養の最大の障壁。その為栄養剤の半固形化や注入ポンプを用いての栄養剤の少量持続投与等の工夫がされる。(5)意識障害でも消化管がはたらいていれば経腸栄養を行う。
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Q118
- 静脈栄養補給法に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
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- 末梢静脈栄養では、1日に2,000kcalの輸液を行うことができる。
- 末梢静脈栄養では、血漿浸透圧の5倍濃度の溶液を投与できる。
- 末梢静脈栄養では、アミノ酸濃度30%の溶液を投与できる。
- 中心静脈栄養の基本輸液剤には、セレンが含まれる。
- 中心静脈栄養では、ビタミンB1の投与が必要である。
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(1)末梢静脈栄養は1日800~1000kcal。一般的な輸液(グルコース濃度7.5%・アミノ酸濃度3%)2000mLの投与で、グルコース150g(=600kcal)、アミノ酸60g(=240kcal)、総エネルギー840kcal。これに20%脂肪乳剤を200mL(=400kcal)加えても総エネルギー量は1240kcalが限界。その為2週間以内の栄養法になる。(2)末梢静脈栄養の輸液の浸透圧は、血漿浸透圧の2~3倍まで(浸透圧600~900mOsm/L)。輸液はブドウ糖もしくはアミノ酸液(いずれも10~12%以下)でないと末梢静脈炎を引起す。(3)末梢静脈栄養アミノ酸濃度はアミノ酸製剤で10~12%。ブドウ糖液であれば10%、総合電解質液はブドウ糖7.5%+アミノ酸3%が浸透圧の関係から血管痛や末梢静脈炎発生の限界。(4)中心静脈栄養の基本製剤はセレンは含まれない。他にコバルト・クロム・モリブデンも含まない。
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Q119
- 長期絶食患者への栄養補給開始後のモニタリングに関する記述である。誤っているのはどれか。1つ選べ。
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- リフィーディング(refeeding)症候群の評価には、血清リン値を用いる。
- エネルギー投与量の評価には、体重の変化を用いる。
- たんぱく質投与量の評価には、窒素出納を用いる。
- 糖質投与量の評価には、血清クレアチニン値を用いる。
- 水分投与量の評価には、水分出納を用いる。
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(4)糖質投与量の評価は血糖値を用いる。糖質の急激な投与はリフィーディング症候群を引起す。血清クレアチニン値は腎機能の検査に用いられる。クレアチニンは腎臓でろ過されたのち、尿に排泄。その為腎臓疾患で高値を示す。
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Q120
- 食品が医薬品に及ぼす影響に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
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- クロレラは、ワルファリンの効果を減弱する。
- 納豆は、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)の効果を増強する。
- グレープフルーツは、カルシウム拮抗薬の効果を減弱する。
- 牛乳は、ビスホスホネート薬の効果を増強する。
- セント・ジョーンズ・ワートは、スルホニル尿素(SU)薬の効果を増強する。
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(2)納豆はワルファリンの作用を減弱。ワルファリンはプロトロビン(血液凝固作用)の合成に必要なビタミンKの働きを拮抗阻害することで抗凝血作用をもたらす。しかし納豆やクロレラはビタミンKを多量に含む為、ワルファリン効果を減弱。スタチン(コレステロールの合成阻害剤)は食事の影響をあまり受けない。(3)グレープフルーツはカルシウム拮抗薬の効果を増強。カルシウム拮抗薬の一部は小腸で分解されるが、グレープフルーツに含まれる阻害成分(フラノクマリン)は小腸の分解酵素(CYP3A4)の働きを阻害する為吸収量が増加する。(4)牛乳はビスホスホネート薬の効果を弱める。ビスホスホネート製剤と牛乳を一緒に飲むと製剤と牛乳中のカルシウムが結合(キレート形成)する為吸収量が減少。(5)セントジョーンズワートはワルファリンやシクロスポリン(免疫抑制薬)等の効果を減弱。セントジョーンズワートは小腸および肝細胞の薬物分解酵素(CYP3A4)の働きを活性化、分解を促す。
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Q121
- 医師から1,800kcal/日の指示で、糖尿病患者に対する栄養指導を行った。患者は、40歳、独身男性。BMI26kg/m2、HbA1c8.0%。食事は購入した惣菜中心とのことであった。現在のエネルギー摂取量は2,200kcal/日。この症例におけるSOAPと記録の組合せである。正しいのはどれか。1つ選べ。
- Sー医師の指示エネルギー量1,800kcal/日
- SーHbA1c8.0%
- Oー食事は購入した惣菜中心
- Aーエネルギー摂取量の過剰
- Pー現在のエネルギー摂取量2,200kcal/日
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(1)Sは本人・家族の訴え等の主観的情報(Subjective)。記録内容は医師から指示された内容なので客観的情報(O:Objective)。(2)Sは主観的情報・記録内容は、血液検査の結果なので客観的情報(O)。(3)Oは検査や測定結果、診察などの客観的情報(誰が見ても同じ判断ができる情報)。記録内容は本人が訴えていることなので主観的情報(S)。(5)Pは計画(Plan)であり評価(A:Assessment)に基づいた計画を記載。記述内容はエネルギー摂取量(食事調査結果)なので客観的情報(O)。
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Q122
- 5歳、女児。血清リン低値と長管骨の骨端線拡大のX線像を認めた。この症例で欠乏しているビタミンである。正しいのはどれか。1つ選べ。
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- ビタミンA
- ビタミンD
- ビタミンE
- ビタミンK
- ビタミンC
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(1)症例はビタミンD不足による「くる病」の可能性が高い。ビタミンA欠乏は網膜の光受容色素であるロドプシンの合成不足による夜盲症。上皮組織の維持機能の低下による角膜乾燥症を引起す。(3)ビタミンE欠乏により溶血性貧血や血行障害、不妊などが起きる。ビタミンEは主に抗酸化作用により細胞膜の脂質の酸化を防ぐことで、細胞(特に赤血球・血管)を守る。(4)ビタミンK欠乏により、骨形成は抑制されるが、血清リン低値は示さない。ビタミンKは①オステオカルシンを介した骨形成促進②プロトロンビンを介した血液凝固等の作用を持つ。ビタミンK欠乏症は骨形成障害・新生児メレナ・頭蓋内出血(乳児)等が起きる。(5)ビタミンCの欠乏により結合組織(主にコラーゲン)形成が阻害され、骨形成障害が起きる。しかし血清リン低値や骨端線拡大は示さない。
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Q123
- 成人の肥満に関する記述である。正しいのはどれか。2つ選べ。
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- 内臓脂肪型肥満は、内臓脂肪面積が100㎝2以上をいう。
- 体脂肪量の評価は、血清LDL-コレステロール値を用いる。
- 減量により、血中レプチン値は上昇する。
- 超低エネルギー食(VLCD)は、医療監視下で行う。
- エネルギーの摂取量は、35~40kcal/kg標準体重/日とする。
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(2)体脂肪量はBMI・体脂肪率・内臓脂肪などから評価。肥満と血清LDLコレステロール値は密接な関係はあるが、肥満者が必ずコレステロール値が高い(標準体重者が正常値)という訳ではない。(3)減量により血中レプチンは低下。脂肪細胞から分泌されるレプチンは、食欲抑制・エネルギー消費増大作用により体脂肪を減少。しかし肥満者はレプチン抵抗性を示す為、血中レプチン濃度が高値にもかかわらず作用が弱い。(5)エネルギー摂取量は25~30kcal/kg標準体重/日が目安。詳細な個人の摂取エネルギー量の設定は、肥満度・性別・年齢・合併症の有無・日常生活やスポーツによる身体活動量などにより行う。
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Q124
- 糖尿病治療薬とその主作用の組合せである。誤っているのはどれか。1つ選べ。
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- DPP-4阻害薬ーインクレチン分解の抑制
- SGLT2阻害薬ー消化管での糖吸収の抑制
- スルホニル尿素(SU)薬ーインスリン分泌の促進
- チアゾリジン薬ーインスリン抵抗性の改善
- ビグアナイド薬ー肝臓での糖放出の抑制
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(2)SGLT2は腎臓での糖の再吸収を抑制。SGLT(sodium glucose transporter)は、体内でグルコースやナトリウム等を細胞内に取り込む役割を持つ。特にSGLT2は腎臓の尿細管に局在しグルコースの再吸収を行う。この働きを阻害すると尿糖の排泄が増え高血糖を改善する。
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Q125
- 炎症性腸疾患に関する記述である。誤っているのはどれか。1つ選べ。
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- クローン病では、抗NTF-α抗体製剤が使用される。
- クローン病活動期では、成分栄養剤が有効である。
- クローン病寛解期では、n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取を勧める。
- 潰瘍性大腸炎では、5-アミノサリチル酸製剤が使用される。
- 潰瘍性大腸炎寛解期では、たんぱく質の摂取量を制限する。
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(5)寛解期は特別な食事療法はしない。潰瘍性大腸炎は下痢・発熱による代謝亢進、潰瘍からの出血などにより低アルブミン血症・鉄欠乏性貧血などを伴う場合が多い。良質のたんぱく質の摂取を心がける。炎症抑制作用を持つn-3系多価不飽和脂肪酸は積極的に摂取。
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Q126
- 消化器疾患の栄養管理に関する記述である。正しいのはどれか。2つ選べ。
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- 急性肝炎の黄疸時には、脂質の摂取量を増やす。
- C型慢性肝炎では、鉄の摂取量を減らす。
- 肝性脳症では、芳香族アミノ酸の摂取量を増やす。
- 急性胆のう炎では、脂質の摂取量を減らす。
- 急性膵炎の急性期には、たんぱく質の摂取量を増やす。
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(1)黄疸期は脂質の摂取を制限。肝実質性黄疸は間接型ビリルビンを直接型ビリルビンに変える工場である肝細胞が破壊され処理出来ず、間接型ビリルビンが溜まった状態。脂肪を制限することで胆汁合成を減らし、肝臓を庇護する。(3)肝性脳症は分岐アミノ酸(BCAA)の摂取量を増やす。肝障害時BCAAはアンモニアの解毒の為に筋肉で使われると同時に肝臓エネルギー源になる為減少。一方肝障害による代謝機能の衰えにより芳香族アミノ酸(AAA)は血中に増加。BCAAを多く摂取することでアミノ酸バランスを整えて脳症の悪化を防ぐ。(5)急性膵炎の急性期は絶飲絶食による膵臓の安静と十分な輸液の投与が基本。飲食は膵臓を刺激して膵酵素の分泌を促し、膵炎を悪化させる。回復するとともに重湯、三分粥~全粥と糖質を主として進め、次第にたんぱく質を増やしていくが、脂質は制限。
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Q127
- 高血圧患者に対し、24時間蓄尿を行ったところ、1日尿中ナトリウム排泄量が200mEqであった。推定される食塩の摂取量として正しいのはどれか。1つ選べ。
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- 4g
- 6g
- 8g
- 10g
- 12g
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(5)ナトリウム(Na)の排泄量は、4.6g(Naの分子量23 200mEq=0.2グラム当量(Eq)23×0.2=4.6g)。Na量を食塩に換算すると摂取食塩量11.6g[食塩の分子量(Na)23+(C1)35.5=58.5 4.6×58.5/23=11.6g]
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Q128
- CKD(慢性腎臓病)における成人の栄養管理に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
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- ステージ1では、リンの摂取量を制限する。
- ステージ2では、カリウムの摂取量を制限する。
- ステージ3aでは、食塩の摂取量を8g/日とする。
- ステージ4では、たんぱく質の摂取量を0.6~0.8g/kg標準体重/日とする。
- ステージ5では、エネルギーの摂取量を40~45kcal/kg標準体重/日とする。
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(1)ステージ1は、高血圧があれば食塩制限6g/日末満、肥満の是正(BMI<25)。ステージ1は、糸球体濾過量(GFR区分(mL/分/1.73m2))が≧90。リンの制限は、ステージではなく、血清リン濃度が基準値内(2.5~4.5mg/dL程度)を維持するよう制限。(2)ステージ2は、ステージ1と同じ食事指導。ステージ2は糸球体濾過量が60~89。(3)ステージ3は食塩制限6g/日未満。ステージ3aは糸球体濾過量が45~59、ステージ3bは30~44。ステージ3よりたんぱく質制限食(0.8~1.0g/kg標準体重/日)。(5)ステージ5は、エネルギー必容量25~35kcal/kg標準体重/日(健常人と同程度)。ステージ5は、糸球体濾過量が、<15(末期腎不全)。肥満の是正(BMI<25)・食塩制限(6g/日未満)・たんぱく質制限(0.6~0.8/kg標準体重/日)・高カリウム血症があればカリウムの摂取制限。
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Q129
- 透析患者の栄養管理に関する記述である。[ ]に入る正しいものの組合せはどれか。1つ選べ。
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58歳、男性。身長165㎝、標準体重60kg、ドライウエイト61kg。週3回の血液透析治療を行っている。1日当たりの摂取量を水分900mL、エネルギー[a]kcal、たんぱく質[b]g、リン[c]mgとした。
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a b c
- 1,500ー40ー600
- 1,500ー60ー900
- 2,000ー40ー600
- 2,000ー60ー900
- 2,000ー60ー1,200
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「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」でエネルギー摂取量は1日30~35kcal/kg標準体重/日。よって投与量は1800~2100kcal/日。たんぱく質は0.9~1.2/kg標準体重/日であり、投与量は54~72g/日。血液透析でのリン摂取は、たんぱく質量(g)×15(mg/日)以下。よって810~1080mg/日。
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Q130
- 甲状腺機能亢進時に摂取を制限するものである。正しいのはどれか。1つ選べ。
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- エネルギー
- たんぱく質
- コレステロール
- ヨード(ヨウ素)
- 水分
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甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモン(トリヨードサイロニン、サイロキシン)の分泌過多。ヨウ素は甲状腺ホルモンの主たる構成成分。よってヨウ素は制限する。(1)(2)(3)(5)はエネルギー代謝、たんぱく質代謝、コレステロール代謝、水分代謝は亢進するので制限しない。
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Q131
- 神経性食欲不振症に関する記述である。誤っているのはどれか。1つ選べ。
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- 好発年齢は、30歳以下である。
- 過食行動がみられる。
- 月経異常がみられる。
- やせを起こす器質性疾患がない。
- リフィーディング症候群をきたすことはない。
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神経性食欲不振症の定義は、標準体重の-20%以下の状態が3ケ月以上続いた状態。30歳以下の女性に発症し思春期に多い。ときに隠れ食いや多食などの異常な食行動がみられ月経異常を伴う。やせの原因となるような器質的疾病は存在いない精神的な病気。(5)リフィーディング症候群は栄養不足の状態が長期間続いた状態に対し、急激に高エネルギーの栄養補給を行った場合に低リン血症、低マグネシウム血症、低カリウム血症をきたし、発熱、痙攣、意識障害、心不全、呼吸不全などを認める症候群。
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Q132
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)の病態と栄養管理に関する記述である。誤っているのはどれか。1つ選べ。
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- 体重減少のある患者は、予後が悪い。
- 安静時エネルギー消費量は、亢進している。
- 分割食を勧める。
- 低たんぱく質食を勧める。
- 高脂肪食を勧める。
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COPDの病態は気道の狭窄などによる呼吸障害の為十分な換気が出来ない事から、カバーしようとして呼吸筋のエネルギー消費が増す。しかし、十分な酸素供給が得られない為、次第に呼吸筋力が低下。悪循環となり、安静時代謝の亢進、筋たんぱく質の崩壊が進み、栄養状態が低下する。よって十分な栄養管理が大切。(4)十分な量のたんぱく質を摂取する。
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Q133
- 貧血とその原因の組合せである。正しいのはどれか。1つ選べ。
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- 鉄欠乏性貧血ーエリスロポエチン産生低下
- 腎性貧血ー赤血球膜異常
- 再生不良性貧血ーナイアシン欠乏
- 溶血性貧血ービタミンB12欠乏
- 巨赤芽球性貧血ー葉酸欠乏
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(1)鉄欠乏性貧血ー鉄欠乏 (2)腎性貧血ーエリスロポエチン産生低下 (3)再生不良性貧血ーすべての血球産生の減少 (4)溶血性貧血ービタミンK欠乏・遺伝性球状赤血球症
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Q134
- 骨粗鬆症に関する記述である。誤っているのはどれか。1つ選べ。
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- 閉経後は、骨吸収が亢進する。
- ビスホスホネート薬は、骨形成を促進する。
- グルココルチコイドの長期投与は、リスクを高める。
- カフェインは、リスク因子である。
- ビタミンKを多く含む食品は、予防に推奨される。
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骨組織は骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収が同時に行われる。微妙なバランスによって骨量は一定に保たれる。骨粗鬆症は骨形成よりも骨吸収が上回り、骨量が減少し、脆弱化が進行した状態。閉経後の女性ホルモンの分泌低下は骨吸収を亢進させる。(2)ビスホスホネート薬は骨吸収の抑制剤。
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Q135
- 食物アレルギーの病態と栄養管理に関する記述である。正しいのはどれか。2つ選べ。
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- 最も多い症状は、下痢である。
- 食後の運動で、アナフィラキシーショックが誘発される。
- 減感作療法では、食物アレルゲンを完全除去する。
- 非特異的治療では、食物アレルゲンを少量から漸増する。
- 鶏卵は、加熱によりアレルゲン性が低下する。
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(1)食物アレルギー症状で最も多い症状はじんましん・かゆみ・皮膚が赤くなるなどの皮膚症状。その他呼吸器症状(咳・ゼイゼイする)、粘膜症状(口が腫れる・目が赤くなる)、消化器症状(吐く・下痢)などの症状も同時又は別々に出現。(3)減感作療法は原因となる食物アレルゲン物質をごく微量ずつ与え身体をならし、過敏反応を起こさないようにする方法。(4)非特異的減感作療法は「ヒスタグロビン注射」により、いずれかのアレルギーの原因に関係なくアレルギー疾患を体質から改善する根本治療。特定のアレルギー原因物質に対して感受性を低下させる方法は特異的減感作療法。
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Q136
- 消化管手術と合併症の組合せである。正しいのはどれか。2つ選べ。
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- 胃切除ー乳酸アシドーシス
- 十二指腸切除ー葉酸欠乏
- 小腸広範囲切除ー下痢
- 回腸切除ービタミンB12欠乏
- 回盲部切除ービタミンC欠乏
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(1)胃切除により起こりやすい症状はダンピング症候群。逆流性食道炎・下痢・貧血(ビタミンB12呼吸不全)なども起こる。乳酸アシドーシスは組織での低酸素状態・重症の肝不全により起こる。(2)葉酸の主な呼吸器官は小腸の空腸。(5)ビタミンCの主な吸収器官は小腸の空腸。
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Q137
- 広範囲熱傷患者の急性期の病態と栄養管理に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
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- 血管透過性は、低下する。
- 尿中窒素排泄量は、減少する。
- 高血糖をきたす。
- 水分を制限する。
- NPC/N(非たんぱくカロリー窒素比)を、健常時より高くする。
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(1)熱傷時で血管透過性は亢進し、血管内から血管外に水分の移動が増加し浮腫を起しやすい。(2)体たんぱく質異化亢進の為尿中窒素排泄量は増加。(4)受傷部からの水分損失た代謝亢進による水分消費増大の為積極的に投与。(5)体たんぱく質の異化亢進や創部からのたんぱく質の濾出によりたんぱく質の必要性は増加する為、健常時より投与たんぱく質(窒素量)は少なくしない。よってNPC/Nは健常時より高くしない。
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Q138
- 78歳、男性。改訂水飲みテスト3点。嚥下造影(VF)検査で、薄いとろみのついた水分は摂取できた。下顎の可動範囲が小さく、動きは鈍い。舌による食品の押しつぶしは難しかった。この患者に提供する食事の形態として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
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- オレンジジュース
- 七分粥をミキサーにかけたもの
- 全粥
- 煮込みうどん
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改訂水飲みテスト3点は「嚥下あり呼吸変化は伴わないが、むせあるいは湿性嗄声を伴う」に該当。(1)オレンジジュースは液体である為誤嚥を起しやすい。(3)下顎の可動範囲が小さく動きが鈍い為全粥の摂取、咀嚼は困難。(4)舌による食品の押しつぶしは難しい為、煮込みうどんの摂取は困難。
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Q139
- 10歳、女児。6歳で発症した1型糖尿病で、インスリン療法中である。身長140㎝、体重35kg、HbA1c6.5%。栄養管理に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
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- エネルギーの摂取量は、1,200kcal/日とする。
- たんぱく質の摂取量は、60g/日とする。
- 脂質の摂取量は、100g/日とする。
- 炭水化物の摂取量は、100g/日とする。
- 食物繊維の摂取量は、6g/日とする。
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(1)身長140cmの標準体重は1.4×1.4×22=43.1kg。糖尿病栄養管理における中等度の労作(生活活動レベルⅡ)時30~35kcalとして算出、エネルギーの摂取量は1293~1509kcal/日。1200kcal/日は低すぎる。(3)糖尿病栄養管理における脂質の投与量は総エネルギーの25%以下。脂肪からのエネルギー供給は323~377kcal。脂肪1g当たりのエネルギー供給は9kcalであることにより、脂肪量を算出すると36~42g/日。100g/日の摂取量は多すぎる。(4)糖尿病栄養管理における炭水化物の適切な投与量は総エネルギーの55~60%。55%で算出すると炭水化物からのエネルギー供給は711~830kcal。炭水化物1gは4kcalのエネルギーを発するので178~208g/日の範囲。100g/日の摂取量は少ない。(5)食物繊維の摂取量は決められていない。食事摂取基準値は13g/日以上。
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Q140
- 妊娠糖尿病患者の栄養管理に関する記述である。正しいのはどれか。2つ選べ。
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- 朝食前の目標血糖値は、70~100mg/dLとする。
- エネルギーの摂取量は、20kcal/kg標準体重/日とする。
- 炭水化物の摂取エネルギー比率は、50~60%Eとする。
- 分割食は、禁止する。
- 経口血糖降下薬を使用する。
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(2)妊娠時はエネルギー制限はしない。軽い労作(生活活動レベルⅠ)時は非妊娠時の標準体重に対して1日当たり30kcal/kg標準体重で算出。食事摂取基準値は、妊娠時の付加量は初期+50kcal、中期+250kcal、後期+450kcal。(4)胎児成長に伴う子宮増大の為消化器官が圧迫され一度に多くの食物を摂取しにくくなる。分割食を推奨。(5)適正な食事や行動(運動)により血糖コントロールする。妊娠時の経口血糖降下薬は胎盤を通過する為胎児の発育に悪影響を及ぼすことがある。
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Q141
- 妊娠20週の妊婦、28歳。身長162㎝、体重62kg(妊娠前体重57kg)。血圧135/85mmHg、蛋白尿(-)、浮腫(-)。前回妊娠時に妊娠高血圧症候群を指摘された。妊娠高血圧症候群の予防を目的として優先される栄養指導の項目である。最も適切なのはどれか。1つ選べ。
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- エネルギーの摂取量
- たんぱく質の摂取量
- 食塩の摂取量
- 水分の摂取量
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(1)妊娠時の体重は標準体重の範囲で経過進行しているので、現在のところは特別な注意は必要ない。(2)蛋白尿(-)より腎機能は正常状態にあるので、現在のところは特別な注意は必要ない。(4)腎機能正常、浮腫(-)より、現在のところは特別な注意は必要ない。
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Q142
- 高齢者の病態と栄養管理に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
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- 尿失禁は、脱水症の原因となる。
- サルコペニアは、内臓脂肪量で評価する。
- 誤嚥の予防では、摂食時に顎を挙上した姿勢を避ける。
- 褥瘡患者では、たんぱく質を制限する。
- フレイルティ(虚弱)の予防では、身体活動を制限する。
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(1)尿失禁は脱水症の原因はない。高齢者では水分摂取の感覚が低下するので、まめな水分投与が大切。(2)サルコぺニアは進行性及び全身性の骨格筋量及び骨格筋量の低下を特徴とする症候群。骨格筋量及び筋力の低下により評価。(4)褥瘡患者では組織修復の為たんぱく質の必容量が高まるので制限せず十分量与える。(5)フレイルテイの予防は可能な範囲で身体活動を務めて行い心身機能の低下を防止。