第31回管理栄養士国家試験問題~応用力問題~
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Q181
- 次の文を読み「181」、「182」に答えよ。
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単独調理場方式のK小学校に勤務する管理栄養士である。学校に対して、Aさんの保護者から給食についての相談があった。Aさんは、この春に入学予定の男児。食物アレルギーがあり、家庭で複数の食品に対して食事制限を行っていることが、保護者から提出された調査票に記載されていた。
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食物アレルギーを有する児童に対して、給食を提供する際の対応である。誤っているのはどれか。1つ選べ。
- 学校全体として、対応組織をつくる。
- 給食担当者が、給食対応の基本方針を決定する。
- アレルギー対応食の調理では、作業の区別化を図る。
- 給食で対応できない場合は、弁当の持参を検討する。
- 学級担任は、エピペンⓇの使用法を身につける。
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給食担当者はマニュアルに沿ったアレルギー対応給食を提供。方針は教育委員会等が対応方針を定め、各学校で対応マニュアルを整備することが求められる。
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Q182
- この男児の給食への対応について、はじめに確認すべき事項である。最も適切なのはどれか。1つ選べ。
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- 家庭での食事内容
- アレルギーに対する服薬状況
- 抗原特異的IgE抗体検査の結果
- 食事制限に関する医師からの指示
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(1)給食での対応は医師から正しい情報を入手、確実にアレルギーの原因食材を除去。家庭での食事内容に合わせた対応ではなく、学校・家庭・医師の連携で対応方法を検討。(2)給食担当者が服薬状況により対応・判断し基本方針を決定することはない。(3)抗原特異的IgE抗体検査結果に基づき対応を行うことはない。
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Q183
- 次の文を読み「183」、「184」に答えよ。
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K大学に勤務する管理栄養士の資格を持つ教員である。学生支援部から学生の食生活改善のための事業を依頼された。学生の食生活調査の結果、男⼥とも野菜の摂取量が少なかった。そこで、学生を対象に、野菜摂取量の増加を目標に取組を行うことになった。表は、K大学学生を対象とした調査結果の一部である。
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本調査結果をふまえて計画した栄養教育の内容である。最も適切なのはどれか。1つ選べ。
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- 野菜不足による健康のリスク
- 野菜に含まれる主な栄養素の働き
- 野菜を多く使ったメニューの選び方
- 野菜の簡単な調理法
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昼食は学生食堂30%・コンビニエンスストア30%の利用、調理は週1回以下80%の状況より摂取増加を目指すには(3)を学び実践できるとよい。(1)(2)知識習得は直接行動にうつるまで時間がかかる。(4)調理しない状況から実現は厳しい。
- Q184
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計画した栄養教育の内容にそった野菜摂取促進の取組である。最初に⾏うこととして、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
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- 弁当用の簡単野菜レシピを配布する。
- 学生食堂に、野菜メニューのプロモーションを依頼する。
- 近隣のコンビニエンスストアに、野菜の⼊った商品のプロモーションを依頼する。
- 近隣の飲食店に、野菜メニューのプロモーションを依頼する。
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できるところから始める。大学勤務教員なので(2)が取組実践しやすい。調査状況より学食の次にコンビニエンスストアへのアプローチとして(3)、(1)(4)より優先する。
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Q185
- 次の文を読み「185」、「186」、「187」に答えよ。
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K健康保険組合に勤務する管理栄養士である。糖尿病予防教室を担当している。次回の教室のために、食物繊維摂取量と糖尿病の発症に関して発表された研究結果をもとに、教材のリーフレットを作成している。
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リーフレットに引用する研究情報として重視される条件である。最も適切なのはどれか。1つ選べ。
- 新聞に取り上げられていること
- 食品企業のホームページに掲載されていること
- 学術誌に掲載されていること
- 学会で口頭発表されていること
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最も信頼性があるのが(3)査読付の学術論文。(1)(2)は信頼性に欠けることがあり(4)はある程度信頼性はある。
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Q186
- 図は、リーフレットに引用することに決めたコホート研究の結果である。図中の「95%信頼区間」についての説明である。正しいのはどれか。2つ選べ。
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- 調査対象者のうち、95%の人がこの値の範囲に存在する。
- 母集団のうち、95%の人がこの値の範囲に存在する。
- 同じ研究を繰り返し100回行ったと仮定すると、95回がこの値の範囲に存在する。
- 同じ研究において、仮に対象者数を増やすと、この区間は狭くなる。
- メタアナリシスでは、複数の研究の信頼区間を平均して求める。
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信頼区間とは同じ実験をした場合に生じる誤差の範囲。横線範囲が狭い程、%置が高い程信頼性が高い。この誤差範囲は同じ実験を重ねる程、対象者が多くなる程狭くなる。(1)(2)のように95%の人がこの値範囲に入るわけではない。■印は結果数値を平均化したもので(5)のように平均化するものではない。
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Q187
- 研究結果(図)の解釈である。正しいのはどれか。2つ選べ。
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- 穀類由来の食物繊維摂取量が多いと、糖尿病の発症率が低くなる。
- 果実類由来の食物繊維摂取量が多いと、糖尿病の発症率が高くなる。
- 果実類由来の食物繊維摂取量が多いと、糖尿病の発症率が低くなる。
- 野菜類由来の食物繊維摂取量が多いと、糖尿病の発症率が高くなる。
- 野菜類由来の食物繊維摂取量と、糖尿病の発症の関連はない。
正解(1)かつ(5)
横軸の相対危険は曝露有無と疾病罹患の関連性の強さ。縦軸説明はないが摂取量とするなら1に近い程摂取量が多い人の発症と少ない人の発症に差がなく、その値が1より小さい場合(1)のように摂取量が多い程発症が低い。果実類・野菜類の摂取量はいずれも相対危険が1に近く(5)のように発症に関連がないことを意味している。(2)(3)(4)は図の説明をしていない。
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Q188
- 次の文を読み「188」、「189」に答えよ。
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K保健所で働く管理栄養士である。管内の特定給食施設の指導・支援を担当している。
W事業所より、以下のように平成27年2月分の栄養管理実施報告書が提出された。 -
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この施設の栄養管理上の課題として挙げられるものである。最も適切なのはどれか。1つ選べ。
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- 利用者の身体状況に基づいた給与栄養目標量の設定
- 利用者の嗜好への配慮
- 利用者への献立に関する情報提供
- 衛生管理マニュアルに沿った点検
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(2)利用者に関する把握・調査項目の嗜好・満足度の実施にチェックが入っているので配慮されていると解釈。(3)情報提供の項目の栄養成分表示・献立表の提供・ポスター掲示・実物展示にチェックが入っているので複数の方法で情報提供が行われていると解釈。(4)衛生管理の項目の衛生管理マニュアル・衛生点検票の活用にチェックが入っているので行われていることを確認。
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Q189
- W事業所とともに改善目標を設定し、保健所として行う支援である。最も適切なのはどれか。1つ選べ。
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- 利用者の嗜好を考慮した献立作成技術の支援
- 最新調理機器活用法の勉強会の開催
- 栄養情報に関する啓発資材の紹介
- 健康管理部門と給食部門との連携の提案
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(1)利用者の嗜好への配慮・利用者を増やす目標から献立作成技術の支援は最優先されるものではない。(2)最新調理器具活用法の必要性の有無が確認出来ないので勉強会の開催は最優先されるものではない。(3)複数の情報提供が行われているので啓発資材の紹介は最優先されるものではない。
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Q190
- 次の文を読み「190」、「191」に答えよ。
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K病院に勤務する管理栄養士である。消化器内科病棟を担当して、入院患者の栄養管理を行っている。 患者は、19歳、男性。3年前にクローン病を発症して治療を受けたあとは寛解が続いていた。しかし、一週間前より腹痛と下痢が続くようになり、このたび下血が認められたため再入院となった。 身長172cm、体重60kg。空腹時血液検査値は、赤球数370×104/mm3、ヘモグロビン10.2g/dL、ヘマトクリット36.0%、総たんぱく質6.6g/dL、アルブミン3.4g/dL、尿素窒素24mg/dL、クレアチニン1.0mg/dL、CRP2.5mg/dL。
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この患者に対して、薬物治療とともに、経腸栄養剤を用いて栄養管理を行うことになった。最も適切なのはどれか。1つ選べ。
- 免疫賦活を目的とした栄養剤
- 分枝アミノ酸(BCAA)が多い栄養剤
- たんぱく質を制限した栄養剤
- 窒素源がアミノ酸である栄養剤
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基準値0.3以下のCRP(炎症・組織障害の指標)が高いのでクローン病の活時。腸管の安静・栄養状態の確保が基本。(1)免疫を活性化しない。消化管に炎症が起きているので炎症を抑えるべき。(2)必要ない。分岐アミノ酸の多い製剤はフィッシャー比を改善するので肝硬変・慢性閉塞性肺疾患・術後等に用いられる。(3)たんぱく質源にアミノ酸を用いるがたんぱく質は制限しない。
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Q191
- 患者に家庭の食卓によく出てくる料理を聞いた。その中で、退院後は控えるように、指導した方がよい料理である。最も適切なのはどれか。1つ選べ。
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- たらのホイル焼き
- ささみの卵とじ
- ごぼうサラダ
- 大根の煮物
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(1)たらは脂質が少なく良質なたんぱく質の供給ができる。(2)ささみは脂質が少なく良質なたんぱく質の供給ができる。(4)食物繊維はごぼうに比べ大根のが少ない。
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Q192
- 次の文を読み「192」、「193」、「194」に答えよ。
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Kリハビリテーション病院に勤務する管理栄養士である。入院患者の栄養管理を行っている。 患者は、75歳、女性。2か月前に脳梗塞を発症し、左片麻痺と嚥下障害に対するリハビリテーションが必要と判断されたために、胃瘻による栄養管理を施行され、本院に転院した。 身長151cm、体重42kg、血圧(服薬あり)144/94mmHg。血清アルブミン値3.7g/dL。
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入院時より、半消化態栄養剤を1,200kcal/日投与して体重は維持できていた。その後、4週間のリハビリテーションを行い、かなり動けるようになったが、体重が1kg減少した。その際の対応として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
- リハビリテーションの内容を見直す。
- 栄養剤の投与量を増やす。
- たんぱく質の投与量を増やす。
- 水分の投与量を増やす。
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(1)回復に向かっているのでリハビリテーションは適切。(3)増やす必要はない。血清アルブミン値の境界値は3.5g/dL。(4)増やす要因がない。
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Q193
- この患者の病棟から、「朝食時も昼食時も投与後に嘔吐した」と連絡があった。このまま嘔吐を繰り返した場合、特に注意すべき事項である。最も適切なのはどれか。1つ選べ。
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- 下痢
- 胃潰瘍
- 誤嚥性肺炎
- 瘻孔周囲の炎症
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麻痺・嚥下障害の症状状態は頻繁な嘔吐物による誤嚥が危惧(1)可能性が少ない。(2)胃潰瘍は最初から栄養剤の投与は不可能。(4)関係性が低い。
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Q194
- 嘔吐を回避するための手段として、半消化態栄養剤を変更することにした。最も適切なのはどれか。1つ選べ。
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- 半固形タイプの栄養剤
- 浸透圧が低い栄養剤
- 脂質量が多い栄養剤
- たんぱく質量が多い栄養剤
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(2)浸透圧が低いと胃から逆流を起しやすい。(3)脂質は胃での滞留時間が長く負荷がかかる。(4)たんぱく質の増加は消化に負荷となる。
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Q195
- 次の文を読み「195」、「196」に答えよ。
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K介護老人保健施設に勤務する管理栄養士である。食事時間には、入所者のミールラウンドを行い、栄養管理のための情報収集を行っている。 入所者は、75歳、男性。BMI18.0kg/m2。常食を自立摂取しているが、食事中にむせがあり、がらがら声になることがある。食事摂取量は減少し、6か月で10%の体重減少を認める。
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この入所者に必要な栄養アセスメントである。最も適切なのはどれか。1つ選べ。
- 認知機能テスト
- SGA(主観的包括的アセスメント)
- 改訂水飲みテスト
- 嗜好調査
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食事中に嚥下障害の症状がみられるので改訂水飲みテストを行い嚥下機能を明らかにすることが適切。
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Q196
- 栄養アセスメントの結果を踏まえ、ミールラウンドにおいて、注意して観察すべき事項である。最も適切なのはどれか。1つ選べ。
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- 食事に要する時間
- 食事への意欲
- 食べこぼし
- 食事中の姿勢
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すべて注意して観察すべき項目。誤嚥を防ぐ意味では食事中の姿勢が重要。(1)長くなると接触条件・注意が守れなくなり誤嚥の危険性が高くなる。時間は30~45分以内。(2)好みや見た目・香等を利用し食欲を引き出す。食べやすさばかり重点をおくと意欲がなくなる。(3)食べこぼしは不適切な食事の提供により起こり又誤嚥も起こる。とろみをつける・噛みやすい形状にする必要がある。
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Q197
- 次の文を読み「197」、「198」に答えよ。
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単独調理場方式のK小学校で働く管理栄養士である。800食規模のHACCP対応施設を新設することになり、その各室に設置する設備の計画を立てている。 この施設の厨房の平面図と、食材、人、食器・食缶の流れを図に示す。
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各室の配置に関する組合せである。正しいのはどれか。1つ選べ。
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- B室ー検収室
- C室ー下処理室
- D室ー主調理室
- E室ー配膳室
- F室ー食器洗浄室
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(1)検収室はA室。食材を受取検収を行う部屋で食材搬入口が指示されているところ。(2)下処理室はB室。検収後種類別に食品庫に保管し下処理室に運ばれるので食品庫に接しているところ。(4)配膳室はF室。調理したものを配缶する場所なので主調理室に接していて食器・食缶がワゴンプールに出ていく流れになるところ。(5)食器洗浄室はE室。ワゴンプールから食器・食缶が戻ってくる流になるところ。E室からF室へは洗浄・消毒した食器・食缶の流。
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Q198
- この厨房における換気・空調および照明に関する記述である。正しいのはどれか。2つ選べ。
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- B室内よりA室内の空気圧を高くする。
- C室内よりD室内の空気圧を高くする。
- D室の作業台上面の照度は500ルクスとする。
- D室の換気系統はB室と同一にする。
- F室の換気系統はE室と同一にする。
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(1)排気に対し給気を多くすると空気圧は高くなる。A室・B室はともに汚染作業区域。A室は室外に接していて空気圧を高くするとB室に空気が流れ衛生的に悪い。(4)D室は非汚染作業区域。部屋は分かれていても換気系統を同一にすると二次汚染を起すことが懸念されるので避ける。(5)F室・E室は非汚染作業区域。但し、E室は洗浄・消毒前の食器・食缶を処理する場所なので汚染作業区域と考える。二次汚染が懸念されるので換気系統の同一は避ける。
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Q199
- 次の文を読み「199」、「200」に答えよ。
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A市役所に勤務する管理栄養士である。大規模災害発生時の危機管理として、民住への食生活支援を担当する立場にある。2015年9月1日に発生した震度6強の地震により、9月7日現在、A市内では15の避難所に3,000人の住民が生活している。すでに支援物資が届き始め、各避難所の避難者の特徴を把握し、巡回支援を行うところである。
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自治体として行う各避難所への対応である。最も適切なのはどれか。1つ選べ。
- 十分な量の主食を追加提供する。
- 市の職員が分担して、各避難所で炊き出しを行う。
- 乳児全員に、粉ミルクを提供する。
- 食事制限のある患者に対して、個別に食事への配慮を行う。
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(1)災害発生から1週間が経過している状況から、たんぱく質・ビタミン・ミネラルの補給食品を追加し健康維持に努めるのが望ましい。(2)食事制限の必要な傷病者は被災直後から重大な影響を受けている可能性がある。個々に状態を確認し栄養・食事管理を優先するべき。(3)ミルクが不要な乳児・特殊なミルクが必要な乳児もいると考えると特徴を把握し粉ミルクを必要とする乳児に提供することが望ましい。
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Q200
- 災害が発生する前の平時に行うべき自治体としての対応である。誤っているのはどれか。1つ選べ。
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- 災害時対応マニュアルの中に、食生活支援の内容を盛り込む。
- 住民全員の3日分の食料を備蓄する。
- 災害時の要配慮者を把握し、リストを作成する。
- 食品流通・販売企業との連携協定を結ぶ。
- 炊き出しへの対応可能なボランティア団体に協力を依頼しておく。
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備蓄には費用・保管場所確保・在庫管理が必要で自治体によって不可能。又自治体により家族の必要量の7日分の用意を勧めているところもある。