第34回管理栄養士国家試験問題~人体の構造と機能及び疾病の成り立ち~
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器官・組織とその内腔を被う上皮細胞の組合せである。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- 食道ー移行上皮
- 胃ー重層扁平上皮
- 小腸ー線毛上皮
- 血管ー単層扁平上皮
- 肺胞ー円柱上皮
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(1)口から食道の粘膜, 腔の粘膜,皮膚の表皮は、重層扁平上皮で被われる。角質がない非角化型重層扁平上皮で被われ, 食道腺から分泌された粘液で潤されている(湿性)。角化があるのは、皮膚の表皮移行上皮は、尿管、膀胱粘膜上皮である。
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(2)胃粘膜に存在する粘液を産生する表層粘液細胞や副細胞、ペプシノーゲンを産生する主細胞は単層円柱上皮である。
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(3)小腸粘膜に存在する消化吸収を行う吸収上皮細や粘液を分泌する杯細胞は単層円柱上皮である。線毛を持つ上皮は、単層線毛上皮と言い、気管, 気管支、細気管支に存在し、異物などの排出に関わる。卵管の線毛上皮は卵を輸送する。
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(4)血管内腔表面を被う上皮は血管内皮細胞とよばれる単層扁平上皮である。(腹膜上皮、肺胞上皮)血管には, 動脈, 静脈, 毛細血管があるが、いずれも内腔表面は血管内皮細胞で被われている。
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(5)肺胞は袋状の構造で, 内表面は単層扁平上皮であるI型肺胞上皮細胞で被われている。 I型肺胞上皮細胞の外側に毛細血管が存在し、ガス交換に関わっている。 II型肺胞上皮細胞はI型肺胞上皮細胞の間に散在する立方形の細胞で,界面活性物質を分泌している。
アミノ酸と糖質に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- 人のたんぱく質を構成するアミノ酸は、主にD型である。
- アルギニンは、分枝アミノ酸である。
- チロシンは、側鎖に水酸基をもつ。
- グルコースの分子量は、ガラクトースの分子量と異なる。
- グリコーゲンは、β-1,4グリコシド結合をもつ。
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(1)タンパク質を構成するアミノ酸はL型である。
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(2) バリン, ロイシン, イソロイシンは分岐鎖アミノ酸(分岐アミノ酸)であり,疎水性の性質をもつ。 また, 運動時に筋肉のエネルギー源の役割をもつ。 アルギニン, リシン,ヒスチジンは塩基性アミノ酸に分類される。
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(4) グルコースの分子量はガラクトースと同じ分子量 (180), C6H12O6である。ほかにもフルクトース, マンノースなどがある。グルコース,ガラクトース, マンノースはアルデヒド基をもつアルドース,フルクトースはケトン基をもつケトースである。
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(5) グリコーゲンは, グルコースが多数結合した多糖類であり、a-1.4グリコシド結合からなる直鎖構造にa-1.6グリコシド結合によって枝分かれをもつ(アミロペクチンより分岐が多い)。グルコースがβ-1.4グリコシド結合で直鎖状に結合した多糖類はセルロースであり,植物細胞の細胞壁を構成している。
核酸とその分解産物に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- 核酸は、ペプチドに分解される。
- ヌクレオチドは、構成糖として六炭糖を含む。
- シトシンは、プリン塩基である。
- アデニンの最終代謝産物は、尿酸である。
- 尿酸の排泄は、アルコールの摂取により促進される。
(2) ヌクレオチドは, 塩基, 五炭糖,リン酸の結合物である。DNAの五炭糖はデオキシリボース, RNAはリボースである。
(3) アデニン (A), グアニン (G) は, プリン塩基, シトシン(C), チミン (T), ウラシル (U) はビリミジン塩基である。DNAの塩基は、 A. C, G. Tの4種, RNAの塩基は、A, C, G, Uの4種である。
(5) アルコールによってATP分解が促進され尿酸産生が増加する。また,アルコールから生成した乳酸が尿中への尿酸の排泄を阻害する。さらに、アルコールの利尿作用により血中尿酸濃度が上昇し、痛風発作が起こりやすくなる。
生体エネルギーと酵素に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- クレアチンリン酸は、ATPの加水分解に用いられる。
- 酸化的リン酸化によるATP合成は、細胞質ゾルで行われる。
- 脱共役たんぱく質(UCP)は、ミトコンドリア内膜に存在する。
- アイソザイムは、同じ一次構造をもつ。
- 酵素は、触媒する化学反応の活性化エネルギーを増大させる。
(2)酸化的リン酸化によるATP合成は、ミトコンドリアで行われる。
に働く。
(4)アイソザイムは,同一個体内で,同じ基質特異性をもち,生成物も同じ,すなわち同一化学反応を触媒するがたんぱく質構造の異なるものいう。a-アミラーゼは, 唾液腺型(S型),膵臓型(P型)の2種のアイソザイムが存在し,一次構造が異なる。乳酸脱水素酵素は,四次構造が異なりアイソザイムは5種類ある。
(5)酵素は、触媒する化学反応の活性化エネルギーを減少させる。
アミノ酸・たんぱく質・糖質の代謝に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- アスパラギン酸は、アミノ基転移反応によりピルビン酸になる。
- ロイシンは、糖原性アミノ酸である。
- ペントースリン酸回路は、ミトコンドリアに存在する。
- グルコース-6-ホスファターゼは、筋肉に存在する。
- グリコーゲンは、加リン酸分解されるとグルコース1-リン酸を生じる。
(4)筋肉にはグルコース-6-ホスファターゼが存在しない。
グルコース1-リン酸はグルコース6-リン酸を経て, 肝臓ではグルコース6-ホスファターゼによって脱リン酸化されグルコースとなる。筋肉にはグルコース-6-ホスファターゼが存在しないため, グルコースにすることはできない。
恒常性(ホメオスタシス)に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- 感覚神経は、自律神経である。
- 生体にストレスが加わると、副交感神経が優位に活性化される。
- ヒトの概日リズム(サーカディアンリズム)は、約12時間である。
- 体温調節の中枢は、視床下部にある。
- 代謝性アシドーシスが生じると、呼吸が抑制される。
(2) ストレスが加わると交感神経が優位に活性化される。
(5)代謝性アシドーシスが生じると呼吸が促進される。
サルコペニアに関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- 加齢による場合は、二次性サルコペニアという。
- サルコペニアは、内臓脂肪量で評価する。
- 筋肉量は、増加する。
- 握力は、増大する。
- 歩行速度は、遅くなる。
(2) サルコペニアは骨格筋量· 筋力 身体能力で評価される,
臨床検査に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- 心電図検査は、画像検査である。
- X線検査は、生理機能検査である。
- 超音波検査は、妊娠中には禁忌である。
- スパイロメトリは、拘束性肺障害の診断に用いられる。
- 核磁気共鳴イメージング(MRI)検査では、放射線被曝がある。
(2) X線検査は, 画像検査である。
レントゲン検査ともいう。X線は放射線であるので, 被曝を伴う。
(3) 超音波検査は, 禁忌に当たらない。
(5) 核磁気共鳴イメージング (MRI) 検査は、 CTとは異なり、磁気を利用して画像を得るため放射線被爆はない。CTとともに体の断面像が得られる代表的な画像検査である。
症候に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- 浮腫は、血漿膠質浸透圧の上昇により出現する。
- 鮮血便は、上部消化管からの出血により出現する。
- 腹水は、右心不全により出現する。
- 吐血は、呼吸器からの出血である。
- JCS(Japan Coma Scale)は、認知機能の指標である。
(3) 右心不全では体循環のうっ血により静脈圧が高まるために, 腹膜腔に体液が漏出して腹水を生じる。腹水の原因に
(4)消化管からの出血が口腔から排出される場合を吐血という。
(5) Japan Coma Scaleは, グラスゴー·コーマ·スケールとともに意識障害の指標である。覚醒度により3段階 (I:刺激しないでも覚醒している状態, II :刺激すると覚醒する状態,Ⅲ:刺激をしても覚醒しない状態)に分け, それらをさらに3段階に分けて評価することから, 3-3-9度方式ともよばれる。
栄養・代謝に関わるホルモン・サイトカインに関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- グレリンは、脂肪細胞から分泌される。
- GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、空腹時に分泌が増加する。
- アディポネクチンの分泌は、メタボリックシンドロームで増加する。
- グルカゴンは、グリコーゲン分解を抑制する。
- アドレナリンは、脂肪細胞での脂肪分解を促進する。
(2) GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1) は、満腹時に分泌が増加する。
(3) アディポネクチンは, メタボリックシンドロームで分泌が低下する。
(5) アドレナリンは白色脂肪細胞に働きかけて脂肪の分解を促進して遊離脂肪酸の放出を増加させる。 また, 褐色脂肪細胞や心筋,骨格筋の働きを高めて遊離脂肪酸の取り込みを促進し,熱産生を増加させる。
肥満症の診断基準に必須な健康障害である。誤っているのはどれか。1つ選べ。
- 脂質異常症
- 高血圧
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)
- 変形性関節症
(妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、難産)
腰痛症
(1)脂質異常症は,内臓脂肪細胞に過剰に蓄積されたトリグリセリドが放出されて生じる。
(2) 肥満による高血圧は,過食による塩分の過剰摂取,内臓脂肪蓄積によりもたらされるインスリン抵抗性と高インスリン血症による腎臓でのNa再吸収亢進, 高レプチン血症により交感神経優位となることなどに起因すると考えられる。
肥満ではさらに, BMIの増加とともに肺容積の減城少に伴う肺機能低下が生じて肥満低換気症候群を起こすので,OSASと肥満低換気症候群はともに肥満による健康障害にあげられている。
(5) 変形性関節症は、加齢とともに肥満による過重な負荷がリスクとなる。
消化器系の構造と機能に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- 食道は、胃の幽門に続く。
- ガストリンは、胃酸分泌を抑制する。
- 肝臓は、消化酵素を分泌する。
- 肝臓は、尿素を産生する。
- 肝臓は、カイロミクロンを分泌する。
(2) ガストリンは, 胃酸分泌を促進する。食塊が胃に入ると胃幽門部のG細胞から分泌される。胃に働きかけて胃の運動を強めると同時に,胃酸やペプシノーゲンの分泌を盛んにする。
(3) 肝臓は、胆汁を分泌する。胆汁は、膵液とともに十二指腸に分泌される。胆汁には, 胆汁酸,胆汁色素, コレステロール,リン脂質、無機質などが含まれているが, 消化酵素は含まれていない。
(5)小腸は、カイロミクロンを分泌する。
循環器系の構造と機能に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- 僧帽弁を通る血液は、動脈血である。
- 肺静脈を流れる血液は、静脈血である。
- 左心室の壁厚は、右心室の壁厚より薄い。
- 交感神経の興奮は、心拍数を低下させる。
- アンジオテンシンⅡは、血圧を低下させる。
(2) 肺静脈を流れる血液は、動脈血である。右心室から肺に血液を送る肺動脈には, 酸素が少ない静脈血が流れている。肺動脈は肺胞で毛細血管となってガス交換を行い,血液は酸素が豊富な動脈血になる。毛細血管の動脈血は肺静脈に流れ, 左心房に注ぐ。
(3) 左心室壁は, 右心室壁の約3倍厚い。
(5) アンジオテンシンⅡは、血圧を上昇させる。
腎・尿路系の構造と機能に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- 集合管は、ネフロンに含まれる。
- アンジオテンシンⅡは、アルドステロンの分泌を抑制する。
- アルドステロンは、腎実質から分泌される。
- バソプレシンの分泌は、血漿浸透圧の上昇により減少する。
- 心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)は、ナトリウム排泄を促進する。
(2)アンジオテンシンはⅡは、アルドステロンの分泌を促進する。
(3) アルドステロンは、副腎皮質から分泌される。
(4) バソプレシンは、血漿浸透圧の上昇により促進する。
(5)心房性ナトリウム利尿ペプチド (ANP)は, 腎臓で糸球体濾過量を増加させ,集合管でナトリウムイオンの再吸収を抑制して, ナトリウムイオンと水の排泄を促進し, 循環血液量を減少させ,血圧を低下させる。ANPは, 心房筋から分泌される。心房に入る血液量が増加して心房が伸展すると分泌が増加する。
内分泌器官と分泌されるホルモンの組合せである。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- 下垂体前葉ーメラトニン
- 下垂体後葉ー黄体形成ホルモン
- 甲状腺ーカルシトニン
- 副腎皮質ーノルアドレナリン
- 副腎髄質ーレプチン
(2) 黄体形成ホルモンは, 下垂体前葉で産生される。 視床下部から分泌される性腺刺激ホルモン放出ホルモンによって分
泌が促進される。女性では排卵を誘発し,排卵後の卵胞を黄体に変える。男性では精巣におけるテストステロンの分泌を促進する。
(3) カルシトニンは, 甲状腺の傍濾胞細胞(C細胞) から分泌されるペプチドホルモンである。血中カルシウム濃度が上昇すると分泌が促進される。破骨細胞の働きと増殖を抑えて骨吸収を抑制し,腎臓でカルシウムの再吸収を抑えて排泄を促進し,血中カルシウム濃度の上昇を抑える。
内分泌疾患に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)では、高ナトリウム血症がみられる。
- バセドウ病では、血清甲状腺刺激ホルモン(TSH)値の上昇がみられる。
- 原発性甲状腺機能低下症では、血清クレアチンキナーゼ(CK)値の上昇がみられる。
- クッシング症候群では、低血糖がみられる。
- 原発性アルドステロン症では、高カリウム血症がみられる。
(2) バセドウ病は, 血清甲状腺刺激ホルモン(TSH)分泌を低下させる。TSH受容体に対する自己抗体が産生される結果,甲状腺が刺激され,甲状腺ホルモン (T3, T4)が過剰に分泌されて, 甲状腺機能が充進する自己免疫疾患である。甲状腺ホルモンの過剰分泌が下垂体前葉からのTSH分泌低下させることを、ネガティブフィードバック機構という。
(3) クレアチンキナーゼ (CK) は主に筋肉に存在してエネルギー代謝に大きく関わり, クレアチンリン酸+ADP⇔クレアチン+ATPの反応を触媒する。その所在から, 心筋や骨格筋が障害される心筋梗塞や骨格筋損傷などで高値となる。甲状腺機能低下症では酵素の代謝が遅れるために高値となるが、一部は骨格筋由来とも考えられている。
(5) 原発性アルドステロン症は, 低カリウム血症を生じる。副腎皮質の腺腫や過形成などが原因でアルドステロンの過剰分泌が起こる疾患である。
神経疾患に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- パーキンソン病では、筋緊張低下がみられる。
- レビー小体型認知症は、ウイルス感染により起こる。
- 脳血管性認知症では、感情失禁がみられる。
- アルツハイマー病では、症状が階段状に進行する。
- アルツハイマー病では、まだら認知症がみられる。
(2)レビー小体型認知症は, 神経変性疾患である。認知症には, アルツハイマー病, 脳血管性認知症, レビー小体型認知症などがある。幻視が特有。
(3) 脳血管性認知症は, 脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因となる。認知症の中ではアルツハイマー型認知症に次い
で多い。障害部位に対応した機能が低下するため,まだら認知症となり,脳血管障害が起きるたびに段階的に悪化する。人格は保持され病識もあるが、感情が不安定で,些細なことで泣き笑いする感情失禁がみられることが多い。
(5)まだら認知症は, 脳血管性認知症でみられやすい。様々な機能低下にムラがあることで(例えば,記銘力は低下しているが,専門知識は正常であるなど)脳の障害が血管障害部位に限定される。
呼吸器系の構造と機能に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- 左気管支は、右気管支より垂直に近い。
- 外肋間筋は、呼気時に収縮する。
- 肺胞膜を介してのガス拡散能は、二酸化炭素より酸素が高い。
- 二酸化炭素は、血液中で重炭酸イオンになる。
- 静脈血の酸素飽和度は、約97%である。
(2)外肋間筋は、吸気時に収縮する。
(3) 肺胞膜を介してのガス拡散能は、二酸化炭素より酸素が低い。
(4)血液に入った二酸化炭素の5%はそのまま血繁に溶解し,5%はヘモグロビンなどのたんぱく質に結合する。 残りの90%は重炭酸イオンとなって2/3は血漿に, 1/3は赤血球内に存在する。
(5) 肺でガス交換を終えた動脈血におけるヘモグロビンの酸素飽和度は97.5%である。末梢で酸素を離したヘモグロビン
の酸素飽和度は75%である。この差の22.5%の酸素が組織に供給される。ヘモグロビンの酸素飽和度は,酸素分圧が高く, 二酸化炭素分圧が低く,温度が低く,pHが高くなるほど高くなる。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- わが国では、女性に多い。
- 吸気時に、口すぼめ呼吸がみられる。
- 樽状胸郭がみられる。
- 動脈血中の酸素分圧は、上昇する。
- 病期分類には、肺活量が用いられる。
(2) COPDの患者においては, 呼気時に口をすぼめる呼吸によって気道内圧が高まり,呼気時の気道閉塞が軽減される利点がある。
(5)病期分類には対標準1秒量が用いられる。年齢·体格·性別により算出された標準的な1秒量の予測値に対して, 実測値の比率を%で示したものである。 診断に用いる1秒率は, 1秒量を分子,努力性肺活量を分母として計算するので, 病期が進行すると努力性肺活量が低下して正確に呼吸機能を評価できなくなる。そのため病期分類には用いられない。
運動器系に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- 骨の主な有機質成分は、コラーゲンである。
- 頸椎は、12個で構成される。
- 橈骨は、下腿の骨である。
- 骨格筋は、平滑筋である。
- 白筋は、持続的な収縮に適している。
(2) 脊柱は,7個
顎椎が7個, 胸椎が12個,腰椎が5個,仙椎が5個と尾椎からなる。
(3) 前腕の骨には、橈骨と尺骨がある。 橈骨は親指側, 尺骨は小指側で、尺骨を中心に橈骨がよじれる運動をすることで手掌をひるがえす運動(回内·回外) を行う。
(5)赤筋は,持続的な収縮に適している。酸素を結合できるミオグロビンが多く含まれ, ミトコンドリアに富んだ筋肉で,TCA回路でエネルギーを産生して持続的な収縮に適した遅筋線維でできている。白筋は赤筋よりミオグロビンとミトコンドリアが少なく, 蓄えたATPと解糖系でのエネルギー産生により瞬発的な収縮に適した速筋線維でできている。
骨粗鬆症に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- 骨芽細胞は、骨吸収に働く。
- カルシトニンは、骨吸収を促進する。
- エストロゲンは、骨形成を抑制する。
- 尿中デオキシピリジノリンは、骨形成マーカーである。
- YAM(若年成人平均値)は、骨密度の評価に用いられる。
女性生殖器疾患と妊娠合併症に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- 子宮頸がんは、腺がんが多い。
- ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、子宮体がんの予防に用いる。
- 閉経後の肥満は、乳がんのリスク因子である。
- 妊娠高血圧症候群の重症度は、浮腫の有無で分類する。
- 妊娠中に発症した明らかな糖尿病を、妊娠糖尿病という。
(2) ヒトパピローマウイルスは子宮頸がんの主たる原因である。そのため,子宮頸がん予防にヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンが有効であり, 2013年度から定期接種化されている。
(3) 乳がんのリスクには,エストロゲン曝露と遺伝因子がある。エストロゲンについては, 出産授乳経験が少ないことや,初経が早い場合に曝露期間が長くなる。また, 閉経後は卵巣でのエストロゲン産生は著減するが, 脂肪組織でエストロゲンが産生されることから, 閉経後の肥満もまたエストロゲン曝露の原因となり, 乳がんのリスク因子となる。
(5)妊娠中の糖代謝異常には, 妊娠前から糖尿病がある「糖尿病合併妊娠」と,「妊娠中に初めて発見される糖代謝異常」
の2種類がある。後者は,血糖値が正常よりも高いが糖尿病と診断するほどは高くない「妊娠糖尿病」と,明らかに血糖値が高くて妊娠中に判明した糖尿病「妊娠中の明らかな糖尿病」の2っに分けられる。
血液疾患に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- 鉄欠乏性貧血では、総鉄結合能(TIBC)が低下する。
- 悪性貧血は、内因子の欠如で起こる。
- 腎性貧血では、エリスロポエチン産生が亢進する。
- 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)では、ビタミンK欠乏がみられる。
- 血友病では、ハプトグロビンが低下する。
(2) 悪性貧血は,萎縮性胃炎により内因子が欠乏してビタミンB12不足となる貧血で, 大球性正色素性貧血となる。 DNA
合成障害による核の成熟障害の結果,骨髄で巨赤芽球を認め,無効造血となる。末梢血では,大型赤血球と過分葉好中球を認め,汎血球減少を示す。
(3)腎性貧血は、 腎障害により腎臓でのエリスロポエチンの分泌が低下して起こる貧血で, 正球性正色素性貧血となる。
骨髄での造血機能が低下し, 網状赤血球が減少することで生じる。
(5) 通常ハプトグロビンの低下はみられない。ハプトグロビンは, 血中の遊離へモグロビンと結合して鉄損失や遊離へモグロビンによる腎障害を防ぐたんぱく質なので,溶血時に血中濃度が低下する。血友病は, 凝固因子の第Ⅷ因子または第Ⅸ因子の先天的な欠損による出血性疾患であり、出血による貧血はあるが, 溶血は起こさない。
免疫と生体防御に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- 溶血性貧血は、Ⅲ型アレルギーの機序で起こる。
- ツベルクリン反応は、Ⅱ型アレルギーの機序で起こる。
- 形質細胞は、液性免疫を担う。
- IgAは、免疫グロブリンの中で最も血中濃度が高い。
- IgGは、5量体である。
(2) ツベルクリン反応は, 細胞性免疫による炎症は, IV型アレルギーに分類される。
(3) 獲得免疫には, 抗体が関わる液性免疫とTリンパ球などの細胞の反応が中心の細胞性免疫がある。液性免疫では,抗原を認識して活性化したBリンパ球が形質細胞に分化して抗体を産生する。抗体は抗原と特異的に結合して抗原の不活性化や分解に関わる。
(5)IgGは、単量体である。
免疫・アレルギー疾患に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- 強皮症では、胃食道逆流症がみられる。
- 全身性エリテマトーデス(SLE)は、男性に多い。
- 関節リウマチでは、蝶形紅斑がみられる。
- シェーグレン症候群では、涙液分泌の増加がみられる。
- 食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、IgA依存性である。
(2) 全身性エリテマトーデス (SLE) は, 20~40歳代の女性に多い。抗核抗体, 抗DNA抗体などの自己抗体と自己抗原の免疫複合体が全身組織に沈着することによって発症する全身性の自己免疫疾患で,多彩な臓器病変を示す。蝶形紅斑·円板状紅斑などの皮膚症状,関節炎, ループス腎炎などがみられる。
(3) 蝶形紅斑は鼻梁を中心に両頬に生じる紅斑で, 円板状紅斑とともに全身性エリテマトーデスに特徴的な皮膚症状として知られている。。
(5)食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、発症機序はIgE依存性で, I型アレルギーに区分される。特定の食物を摂取した後,運動負荷によって誘発される疾患である。原因食物は小麦と甲殻類が多い。
感染症に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。
- わが国の肝細胞がんの原因として、B型肝炎ウイルスが最も多い。
- 黄色ブドウ球菌は、グラム陰性球菌である。
- 結核は、新興感染症である。
- レジオネラ感染症の原因は、生の鶏肉の摂取である。
- カンジダ症は、消化管に起こる。
(2) 黄色ブドウ球菌はグラム陽性球菌に属し, 複数の外毒素を出すことから, 食中毒の他,様々な疾患の原因となる。
(3) 再興感染症は,以前から知られていたが最近再び問題となってきた感染症で,結核はその代表格である。新興感染症は近年になって初めて認識された感染症で, 局地的または国際的に急速に広がり, 公衆衛生上問題になるような感染症である。新型コロナウイルス感染症, 重症急性呼吸器症候群,鳥インフルエンザ, エボラ出血熱なとがある。
生の鶏肉による感染症で有名なのは,カンピロパクター感染症である。
ジダ症と、血液や内臓に発症する深在性カンジダ症に分けられ、前者は消化管(口腔 咽頭·食道など), 皮膚,性器などにみられる。