栄養士・管理栄養士は、人々の健康を「食」から支える専門職です。病院や介護施設、保育園、学校給食、企業の食堂など、働く場所は多岐にわたり、食育という言葉が一般的になった今、社会的なニーズも年々高まっています。
しかし、実際の職場に多く見られるのが「早番・遅番があるシフト制」「一人職場が多い」といった特徴があり、特に子育て中の栄養士にとっては仕事と育児の両立の難しさが課題となっています。
また、厚生労働省のデータによると、栄養士・管理栄養士の約9割が女性であり、出産や育児といったライフイベントと仕事の両立は避けて通れないテーマとなっています。
今回のコラムでは、子育て中の女性目線から現状の課題を整理した上で、家庭や職場でできる工夫、そして長く働き続けるためのキャリアの選択肢について解説します。
👉 目次
- 1. 現状と課題
- 一人職場の多さ
- シフト制・早番遅番の負担
- 職場の理解不足
- 2. 家庭でできる工夫と理解の得方
- 役割分担を見える化する
- ちょっとだけ楽できる選択肢を増やす
- セーフティネットの事前登録
- 家族に仕事の意義を伝える
- 3. 職場での工夫と働きかけ
- 上司への情報共有と交渉のコツ
- 代替体制を作るマニュアル化
- 制度の活用と改善提案
- 4. 長く働くためのキャリア設計
- ライフステージ別の働き方も検討
- 派遣社員としての働き方
- 副業・フリーランスの検討も
- 働きやすい職場選びとは?
- 5. よくある質問(FAQ)
- 6. まとめ
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1. 現状と課題
栄養士・管理栄養士が活躍する、医療・介護・保育など、多くの職場では、シフト制での勤務体制が多く、また他の職種に比べ同資格保持者のいない一人職場という就業環境が、子育て期の両立を難しくする要因になりがちです。
シフト制だと、早番・遅番での勤務はもちろん、土日祝日も稼働している職場が多いため、土日祝お休みや早朝や遅くまで開いていない保育園に預けられない、という問題が出てきます。また、一人職場の場合には、急な子どもの発熱でも穴をあけることが困難であり、それらが引き金となり離職につながることは多くあります。一般的な固定時間制の職場とは異なり一般的な保育園の時間は合わない為、保育園探しが難航し復帰が遅れてしまうことも…。
一人職場の多さ
「園の栄養士は私一人。子どもが発熱しても『代わりがいない』と言われ、病児保育に駆け込むことも。気持ちは子どものそばにいたいのに、責任感との板挟みでした。」(保育園勤務・40代)
栄養士の必置義務のない保育施設の場合、調理師や保育士は複数配置でも、栄養士は1名のみという職場は珍しくありません。代替不在は心理的負荷を高めます。
シフト制・早番遅番の負担
「早番の時は朝5時に起床し7時に出勤。保育園の預かりは7時30分からなので、夫に送りを頼む日が多いです。遅番は帰宅が21時を超えることもあり、夕食や寝かしつけは家族に協力してもらっています。」(病院勤務・30代)
病院や高齢者施設といった給食施設では、1日3食提供するため「6:00–15:00」・「10:00–19:00」等のシフトがあり、家庭の時間と重なりやすいのが実情です。
職場の理解不足
「上司は『家庭の問題』として捉えがちで、時短やシフト調整の相談が通りにくい状況でした。献立だけでなく、発注・衛生管理・アレルギー対応など多岐にわたる業務の理解が薄いのも課題です。」(病院勤務・20代)
相談しにくい環境だと言いづらくなりがちです。栄養士は専門職であり、1人で作業することも多く、業務内容がしっかりと把握されていないことも多く感じます。調理員は必ず現場での作業になるため、栄養士のみ在宅等は通りにくい職場が多いのが現状ですね。
2. 家庭でできる工夫と理解の得方
栄養士の仕事をしながら育児と両立する難しさや課題が見えましたね。
ここからはちょっとしたことからできる工夫をご紹介します。やっぱり時短ができない栄養士は無理なのかも…相談先がいなくて…そんなお悩みを抱えているママの皆さんの参考になれば幸いです。

役割分担を見える化する
育児を家族で行っている場合、どちらかに負担が偏ってしまうことも少なくはありません。
まずは送迎・買い物・夕食・風呂・寝かしつけなどのタスクを、家事シェア表やカレンダーで可視化しましょう。具体的に何を誰が行っているかを共有し、パートナーや家族と理解することが大切です。また、スマホアプリが発達したためGoogleカレンダーや家事分担アプリを使えば、シフトの共有はもちろん、確認も容易でに急なシフト変更などにも対応しやすくなるでしょう。
- 早番勤務なら迎え担当、遅番勤務なら送り担当
- 保育園や幼稚園に提出する書類期限の共有
- 買い物の日や夕飯担当の記入
ちょっとだけ楽できる選択肢を増やす
全部親がやらないと…!完璧にしないと…!という考えで自分を追い込んでいませんか?
仕事で子どもといられない時間が申し訳ないけど、帰宅したら家事もあって…と身を削る日々…なら家事でちょっとだけ楽できる逃げ道を探しましょう。
- 離乳食にレトルトパウチを使用
- 宅配食材・冷凍ミールキットで親の食事調理も軽減
- 家事代行をたまに導入し、メンタルの余裕を確保
- お休みの日はパジャマパーティー!など少しだらけるのも楽しみにする
あとは洗濯物はたたまない!や食事内容もメインがあればOKにする!など各家庭ならではのちょっと楽にする術があるようです。
栄養士だから栄養の事も考えないと…!と思いがちですが、できる日のみにするようにするとぐっと気持ちが楽になりそうですね。
セーフティネットの事前登録
病児保育・ファミリーサポートなど地域の支援制度(※地域により様々です)は、早めに登録しておくのがベスト。いざという時に当日枠を使える可能性が上がります。パートナーや家族、近場にいる親族などと「緊急時マニュアル」を共有し、連絡先・持ち物・移動手段を明確に。
また、自治体により回復後も預かってもらえることもあります。ある制度は活用していきましょう。
家族に仕事の意義を伝える
仕事と家庭の両立をしているのはパートナーも同じです。
「食と健康を守る仕事」である意義を、パートナー・子どもに具体的なエピソードで共有しましょう。仕事の理解が深まるほど、協力は得やすくなります。
仕事の休みの日は、家族のことを優先するなどして、感謝の気持ちを伝えつつお互いを尊重することで理解を得ることは大切です。
3. 職場での工夫と働きかけ
上司への情報共有と交渉のコツ

- 子どもの年齢・保育時間・通院事情など事実ベースで共有
- 保育園や学校の行事やイベントなどは、事前に年間スケジュールを確認し、情報共有しておく
- 「月○回は早番可能」など代替案をセットで提示
- 繁忙期・検収日などは優先出勤するなど相互配慮を明確に
まずはきちんとした現状を知ってもらうことが大切です。どうしてこの時間までなのか、この曜日はどうしてこうなのかを説明し理解してもらうためにもきちんとした事実ベースで整理された情報を伝えることが必要になります。
復職前に保育園が決まっていたら説明がちゃんとできると良いでしょう。いざ復職してから慌てて後から協力してほしいことを伝えるのではなく余裕があるときに擦り合わせた方が良いからです。また、「あれはだめ」「これは無理」と主張ばかりしてしまうと亀裂の元にもなりかねません。また、シフト制の職場ではシフト担当の方へ先んじて相談しておくことも大切です。希望休が増えてしまう月は他の土日を代わりに出る等、代替案も大切です。お互いが気持ちよく仕事ができるようにしていくことが大切ですね。
代替体制を作るためのマニュアル化
一人職場では、調理員さんから急にいなくなるとどうしたらいいか分からない…!とお休みの日でも連絡が来たりしませんか?
業者から連絡があった、施設長からこんな相談があった、クライアントからの問い合わせが…などなど。
発注先や衛生管理、アレルギー対応フローなどをマニュアル化するとお互いに安心できます。
急な欠品時はこれ、アレルギー対応はこの食材など、文章だけではなく物や場合により表・フローチャート図にするのも良いでしょう。家庭内の家事と同じで見える化をすることで、これなら対応ができる、と思ってもらえることは多いです。口頭だけではなく文章として残すのも大切。調理員もシフト制で動いているため、伝えている人がいないことも少なくはない為です。
ただ、こちらから一方的に代行を依頼するばかりではなく、日頃から他職員との信頼関係を構築することも忘れてはいけないですね。
“お互いさま”という気持ちをもって、他職員へのフォローを自ら積極的に行うことも大切です。
制度の活用と改善提案
育児短時間勤務・看護休暇・フレックス・テレワーク(可能業務のみ)など、使える制度は積極的に。類似課題を持つ職員とチームを組み、小さな成功事例を積み重ねて制度改善を後押ししましょう。
4. 長く働くためのキャリア設計

ここまでは両立して勤務継続をするための工夫をお伝えしました。
ただ、同じところで勤務を続けるのも良いですが、より柔軟に働くために仕事を変えるのも選択肢のひとつとして重要です。
金銭面やパートナーとも相談の上、一時的に非常勤での仕事を選択する、在宅で行える仕事を探すのも両立のカギになります。
ライフステージ別の働き方
- 妊娠・出産期:母体優先。業務の棚卸しと引き継ぎを早めに。
- 乳幼児期:時短・パート中心。自宅近くの職場に切替も選択肢。
- 学童期:フルタイム復帰や役割拡大。研修や資格更新でスキル維持。
- キャリア成熟期:管理職・指導職、あるいは監修・教育・講師への展開。
正職員で働いていた方が妊娠を機に非常勤へ、という話も多くあります。
職場側としては慣れた方が辞めてしまうより、時短勤務が可能であれば継続して就労してもらえるのは安心感があるものです。もし勤務地が良く、信頼関係も十分にできていればそういった選択肢も良いでしょう。また、産休代替派遣でお願いした栄養士との兼ね合いにもなりますが、サポートとして復職後もしばらくいてもらえるか等、上長を始めとした職場の方と相談しながら進めていくことも大切です。
派遣社員としての働き方
- 専門性を活かしながら、家庭と仕事を両立しながら働くことができる。
- 自分のライフスタイルにあった職場を選択。
- フォロー・サポート体制の充実。
- 家族との時間も大切にしながらキャリアアップできる。
子育て中、時短のお仕事を探してもなかなか見つからない…そんな時は派遣業務も視野に入れてみませんか?
短期間だからこそ必要としている職場も多く、融通が利きやすいのも特徴です。
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DietitianJobでは派遣のお仕事もご紹介しています。⇒お仕事を探してみる♪
副業・フリーランスの検討も
在宅でできる仕事が拡大中。以下は目安感の一例です(相場は案件・実績で大きく変動します)。
- レシピ開発:1件 5,000〜20,000円
- 栄養記事ライティング:1文字 2〜5円
- オンライン栄養相談:30分 3,000円〜
- 食品・サプリ監修:案件ベースで個別見積もり
まずは副業から始め、実績と顧客からの紹介を蓄積して独立へ――という流れも現実的となりました。
特定保健指導業務の単発委託も多くあります。
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働きやすい職場選びの視点
- 複数人栄養士を配置しているか(休みやすさに直結)
- 勤務時間帯の分布(早番・遅番の割合)
- 有休取得率・看護休暇の運用実績
- テレワーク可否(書類作成・栄養指導の一部など)
なかなか一人では良い職場が見つけられない…!
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5. よくある質問・相談
Q1. 子どもの急病で急に休むのが心苦しい…
日頃から代替マニュアルを整備し、上司と「緊急時の連絡・判断基準」を共有してみるのはどうでしょうか。
また、病児保育の事前登録と、祖父母などのご親族を頼る・ファミサポの連絡体制など、色々な制度を使えるようにしておき、心の余裕を生むのも大切です。
Q2. 時短勤務だと評価や昇進が不利?
短期的には役割制限が生じがちですが、成果の可視化(指標化)と業務改善の提案で評価を得られます。期間限定のキャリア戦略として位置づけましょう。
Q3. フリーランスは保証もなく不安です。何から始めたらいい?
まずは副業から。既存の強み(例:アレルギー対応、減塩メニュー、保育園給食)をテーマにブログ・SNSで発信し、小さな実績を積み上げます。実績が営業資料になります。また、フリーランスとしつつ最初は派遣や非常勤と平行しながらの方も多いのも事実です。
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6. まとめ
両立の鍵は、家庭・職場・社会の支援を組み合わせること。家族の役割分担と地域資源の活用、職場での代替体制づくり、ライフステージに合わせたキャリア選択を重ねれば、栄養士としてのキャリアの歩みを止めずに進めます。
「全部をひとりで抱え込まない」――これが、長く自分らしく働くための最大の秘訣です。
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