栄養士とは?仕事内容とやりがいを徹底解説

栄養士とは、食に関する専門知識を活かして、健康的な食生活を提案や支える職業で、病院や福祉施設、企業など多岐にわたる現場で活躍しています。栄養士の仕事内容は献立作成や給食管理だけではありません。様々な場面で多方面に活躍する栄養士の魅力、そしてそのやりがいを徹底解説します。

👉 目次

栄養士とは何か

そもそも栄養士とは、と聞かれてぱっと答えるのは難しいですよね。
栄養士は栄養士法で定義されており、『都道府県知事の免許を受けて、栄養士の名称を用いて栄養の指導に従事することを業とする者をいう』と明記されています。

栄養士とは、食に関する専門知識を持ち、個人や集団の健康を促進するために食事を管理・指導する食の専門職です。特に医療、福祉、教育、社員食堂などの現場で重要な役割を果たしています。栄養士は、食事の栄養バランスを考えたり、健康な方を対象(※)に栄養指導を行ったりすることで、病気の予防や健康の維持に貢献します。具体的には施設で食事提供をする際、利用者に合わせたカロリーなど栄養計算を行い、献立をたて栄養管理された食事の提供を行います。また、栄養士は食育を行うのも重要な仕事のひとつです。特に学校や地域の活動を通じて、子どもたちに健全な食習慣を教える役割も担っています。このように、栄養士は科学的な知識をもって食を支え、人との関わりの中でそれらを伝えていくコミュニケーションが求められる職業です。
※傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導は管理栄養士が行うと明文化されています。

栄養士と管理栄養士の違い

栄養士と管理栄養士の違いは、主に資格と業務の専門性にあります。

栄養士は栄養に関する基礎的な知識を持っている資格で、栄養士養成施設で学び卒業し、「都道府県知事の許可を受け」栄養士となります。
主に給食管理(献立作成、調理、食事の提供)や、健康な人に対して栄養指導を行います。健康な方が健康であり続けるために正しい栄養の知識を伝える、子供たちへ今後健康を維持するための食育を行う等、栄養の専門家として人々の健康に寄与します。献立作成は社員食堂、学校や保育園、病院の通常食献立等様々な施設で行うことができます。また、介護や保育の場において食形態加工や離乳食調理の為に栄養士が必要とされる場合もあり、栄養だけではなく食事のプロフェッショナルとして活躍できます。

一方、管理栄養士はより高い専門性を求められ、管理栄養士養成課程のある学校で所定の単位を取得し卒業後、国家試験に合格する、または栄養士養成施設を卒業して実務経験を積み、国家試験に合格することで「厚生労働大臣の許可を受け」管理栄養士になれます。栄養士は都道府県知事ですが、管理栄養士は厚生労働大臣の許可を得た資格となっています。
管理栄養士は、栄養士の業務に加え、傷病者の療養のために必要な栄養指導を行ったり、特定保健指導での個人の健康の保持・増進のための栄養指導をおこなったりもします。また、医療現場など特別な配慮を必要とする給食の管理や指導(健康増進法により、医療的、または特別な栄養管理を必要とされる「特定給食施設」では、管理栄養士の配置が義務づけられています。)、アドバイザリー業務、食育プログラムの企画など、より高度な業務を担当します。

このように、栄養士は基礎的な知識を持つ職業であるのに対し、管理栄養士は栄養士の知識をベースにより専門的な知識と経験を活かして、幅広い分野で貢献できる資格となります。

栄養士と調理師の違い

栄養士と調理師の違いは資格の取得方法や、業務内容にあります。
栄養士資格の取得には先述の通り、厚生労働大臣省が指定する養成施設の卒業が必須となりますが、調理師資格の取得は2通りあり、養成施設の卒業または実務経験を経て試験を受け合格をするかのどちらかになります。
栄養士は栄養学に基づき人々の健康のための食事の提供をするプロフェッショナルですが、調理師はある食材をより美味しく、よりニーズに合った調理をするプロフェッショナルです。同じ食に関わるため、栄養士が立てた健康のための献立を、調理師がより美味しく調理する、というのはよく見られますね。逆により美味しさを重視する施設や場所では調理師のレシピを栄養士が記録しサイクルメニューとして組み立てていく場合もあります。どちらも取得する際生涯役に立つ知識が得られ人気の資格です。

職場別に見る栄養士の仕事内容

栄養士の仕事内容は、職場によって異なります。職場によって求められるスキルや知識は異なりますが、どの現場でも食を通じ人々の健康や生活を支える重要な役割を担っています。

病院・クリニック

病院やクリニックでの栄養士の役割は、患者の疾病治療において非常に重要です。100床以上の病院では栄養士または管理栄養士の設置義務が医療法で定められています。
具体的な業務内容としては、給食管理業務、調理業務が多いです。約束食事箋や医師の指示をもとに、適切な献立の作成及び展開を行うことや、安全で栄養価が守られている食事を調理することが求められるため、栄養士としてはとてもやりがいのある職場でしょう。美味しさももちろん大切ですが、疾病治療のため栄養管理が重視されるため、栄養士・管理栄養士の複数名採用が見られるのも特徴です。大規模な病院であるほど管理栄養士と連携を取りながら業務を行うことも多いです。

保育園

保育園では栄養士の設置は義務ではありません。
ですが昨今の食育に対する関心の高さ、より安心で栄養に配慮された献立の為に栄養士を採用する保育園は多いです。
子どもたちの成長に欠かせない栄養を考えた食事を提供し、健やかな成長を育むサポートを行うことが主な仕事です。調理師と一緒に昼食やおやつの調理を行う施設がほとんどで、献立作成、食材発注を調理以外の時間に行うことが多いです。また、食物アレルギーの対応はもちろん、誤飲による窒息事故なども近年発生しているため、保育士と連携を取り栄養士が中心となり保育園での安全な食環境づくりにも力を発揮できます。

また、保育園では子どもたちに食育を行う機会も多く、食材の特徴や調理方法を子どもたちに教えることで、食に対する興味・関心を引き出し、食べることを好きになってもらう、健康的な食習慣を育むサポートを行うことも重要な役割です。

さらに、保護者とのコミュニケーションも大切です。栄養士は家庭での食事のアドバイスや、特別な配慮が必要な子どもに対して適切な情報提供を行います。このように、保育園での栄養士は、子どもたちの健やかな成長を支えるための多岐にわたる役割を担っているのです。

福祉施設

特別養護老人ホームには栄養士の必置義務があります。また、老健施設にも栄養士または管理栄養士の設置義務があり、栄養管理が重視されているのが分かりますね。(食数が多い特定給食施設には管理栄養士の設置義務があります。※特定給食施設は、健康増進法第20条第1項、健康増進法施行規則第5条により、「特定かつ多数の者に対して継続的に1回100食以上又は1日250食以上の食事を提供する施設」のこと)障碍者福祉施設には栄養士の設置義務があるとは限りませんが(40名以上の児童発達支援センターでは義務があります)、栄養の整った献立の為に採用されることが多いです。
福祉施設における栄養士の役割は、高齢者や障碍者に対して、適切な食事を提供することです。栄養士は利用者一人ひとりの健康状態や嗜好を考慮し、栄養バランスを重視したメニューを作成します。これは、健康の維持や慢性疾患の予防に非常に重要な役割を果たします。

また、福祉施設では食形態にも配慮が必要です。嚥下(えんげ)障害や食欲不振などそれぞれ異なる身体状態の利用者が多いことから、食材の調理法や食事の形態を工夫することが求められます。栄養士は、こうした調整を行いながら、安全で美味しい食事を提供します。

さらに、利用者とのコミュニケーションを通じて、特別感のある食事、懐かしい食事や、季節を感じられる食事の提供を通じて食べる喜びを感じてもらうことも大きな役割です。

社員食堂

社員食堂での栄養士はまた他の施設とは異なります。
従業員の健康をサポートするため、バランスの取れた食事…だけではなく、美味しい食事、より魅力的なメニューを提供する必要がある場合が多いです。

具体的には、栄養士は栄養素のバランスやカロリーを考慮しながら、飽きの来ない様々なメニューを計画します。また、社員食堂での食事は昼食のみのところが多い分、種類や食数も多いため調理工程を考慮した献立の作成が求められます。そして、調理師・調理補助・栄養士と他職種が連携して食事提供を行う職場環境づくりも重要な役割のひとつです。

さらに、社員食堂は、コミュニケーションの場としての役割もあり、社員同士がリラックスしながら食事を楽しむことで、仕事の効率が向上することも期待されます。最近では、福利厚生の一環として社員食堂の健康管理に力を入れている企業も増えており、イベントメニューや健康メニューなどの楽しみを増やすことは栄養士の力の見せどころです。

食品メーカー、企業

食品メーカーや企業における栄養士の仕事は、多岐にわたります。

例えば、商品開発、レシピの開発や改良、パッケージの栄養表示の監修などが求められます。また、市場調査を通じて消費者のニーズを把握し、さらに、栄養に関する知識を駆使して、マーケティング部門との連携を図ることも重要です。
一般的な食品だけではなくサプリメント等のメーカーでの栄養士採用もあります。栄養面からサプリメントの有用性を説明するのに資格があるのは説得力が増すためです。
このように食品メーカーや企業で働く栄養士は、栄養学の知識を活かして、新しい食文化を創造する役割を担っており、非常にやりがいのある職場環境といえるでしょう。調理業務がなくオフィスでの事務作業が多い、勤務時間が安定している等の理由から、求人としては人気が高めです。

栄養士のやりがい

栄養士のやりがいは、多くの人の健康のサポートをできるところです。
健康を考えた、バランスの良い献立を立て、調理し、そして食べてもらえる──美味しかった、の言葉がなくても残食なくきれいに食べきられた食器を見ると、今日は良い献立を立てられたな、と充実感を感じられます。

食事を通じて、健康維持に貢献できる

食事を通じて健康を維持することは、栄養士にとって非常に重要な使命です。私たちの体は、日々の食事から得られる栄養素によってできているのです。栄養士は、個々の健康状態や生活習慣に応じた食事提案を行うことで、利用者の健康維持を直接的に支えているのです。

さらに、食事に関する知識を広めることで、利用者自身が健康に対する意識を高める手助けも行います。栄養士としての役割は、単に食事を提供するだけでなく、健康維持のためのパートナーとして、利用者の生活に寄り添うことなのです。

利用者の笑顔やおいしい、という感謝の言葉

利用者の笑顔や「おいしい」「今日の献立良かった」といった感謝の言葉は、多くの栄養士にとって恐らく嬉しかったこととしてあげられることでしょう。私も、気合の入れた新メニューの日や、行事食の日は「どうだった?」と聞いた時に「良かった」「美味しかった」「楽しかった」という感想をもらえた時は非常に嬉しく、また頑張ろうと感じました。家族などの身近な人間ではなく、仕事として、プロとして提供した献立や食事が嬉しそうに、楽しそうに食べてもらえる瞬間は本当に嬉しいものです。

また、病院や福祉施設では、患者や利用者の病状に合わせた食事を提供することが求められます。制約のある中で工夫して出した食事が、「これが食べられて嬉しい」といった声は聞くことが、日々の励みになります。

また、子どもたちに食育を行う学校給食の栄養士なら「嫌いだった野菜が食べられた」「保育園で食べたから家でも食べるようになった」という成長を感じる瞬間はとてもやりがいを感じます。栄養士が提案した食材やメニューが、子どもたちに喜ばれ、ご家庭でも「おいしかった」と報告されることは、栄養士としてとても嬉しい瞬間です。

利用者の健康を支える存在として、こういった笑顔や感謝の言葉が、栄養士としてのやりがいを一層深めてくれるのです。欠かせない食事だからこそ身近に得られる感謝は栄養士ならではですね。

食のプロフェッショナルとしての誇り

栄養士として働くことは、食のプロフェッショナルとして多くの責任と誇りを伴う仕事です。私たちは栄養に関する深い知識を持ち、その知識を基に人々の健康を支える役割を担っています。日々の業務を通じて、食事が健康や成長に与える影響を直接実感することができます。

また、食事は文化や地域の特性、そして個々のライフスタイルに密接に関わっています。栄養士として、そうした多様性を理解し、個別のニーズに応じた提案を行うことが求められます。このプロセスを通じて、利用者の健康的な生活を実現するお手伝いをすることができるのは大きなやりがいです。

さらに、栄養士は食品や食事に関連するさまざまな問題に対処するため、常に新しい知識や技術を学び続ける必要があります。これにより、自己成長を促し、食の専門家としての視点を広げることが可能になります。このように、栄養士としての誇りは、他者の健康を支えると同時に、自身の成長をも実感できる点にあるのです。

栄養士になるには、資格の取り方

栄養士は「栄養士免許」が証明書となります。(証書なのでハードファイル等で保管されてる方が多いイメージです)
この免許を得るためには、厚生労働省が指定した栄養士養成課程のある施設で学び卒業し、都道府県知事の許可を受ける必要があります。

学校選びのポイント

学校選びは、栄養士を目指す上で一番に大切なポイントです。まず、カリキュラムの内容をしっかり確認しましょう。
座学だけではなく実習に力を入れているか、どのような内容が学べるか、何年制か、管理栄養士国家試験の受験資格が取れるかなどがポイントになってきます。

実践的な授業が多くあると、現場での即戦力となれますね。特に、給食管理ソフトが導入されているとすぐに活かせることが多いです。また、近隣のスーパーや企業とコラボし、お弁当のメニュー提案を行ったり、学食のメニューの提案に関われたりとその学校ならではの特色があります。

次に、学校の設備やサポート体制も考慮に入れましょう。最新のキッチンや栄養学に関する図書館が充実していると、より学びやすい環境が整っていると言えるでしょう。また、卒業生の進路先も参考になります。先輩がどのようなスキルを身につけ、どのような職場で働いているかという情報は、自分の将来に合った学校選びが可能になります。しっかりリサーチを行いましょう。

最後に、2年生の短期大学や専門学校と、4年制の大学では栄養士として社会に出るタイミングが異なり経験にも差が出てきます。自分のライフスタイルや目標に合わせて進学先を選択できるとよりよいでしょう。

実習やインターンシップの重要性

実習やインターンシップは、栄養士を目指す学生にとって非常に重要な経験です。理論だけではなく、実際の現場での実務を通じて、栄養士としてのスキルを磨くことができます。実習では、患者や利用者とのコミュニケーションスキルや、チームでの協力の大切さを学ぶことができるのです。

また、食事の提供や栄養指導において、どのような課題があるのかを実際に体験することで、自分自身の理解を深めることができます。

さらに、実習やインターンシップでは、現場で働くプロの栄養士から直接指導を受けるチャンスがあり、貴重なアドバイスや実践的な知識を得ることができます。このような経験を積むことで具体的な将来像を描くことができ、就職活動の際にも強みとなり、自信を持って栄養士としての道を進むことができるでしょう。

また、栄養士の資格を取り、すぐに栄養士として活躍できるわけではありません。
利用者から必要な情報を聞き出すためや、調理のチームリーダーになることの多い栄養士はコミュニケーション能力や協調性を磨く必要がありますし、栄養学だけではなく食材の知識や病理学など、豊富な知識が必要となります。栄養士資格はもちろん、様々なスキルを身につけることでキャリアを築けるでしょう。

まとめ

栄養士とは、食を通じて人々の健康をサポートする専門職です。養成施設の卒業が必須で、都道府県知事から許可を得て免許取得できます。

病院や福祉施設、学校給食など、さまざまな現場で働きながら、健康の保持・増進のための給食管理、栄養指導を主に行います。栄養指導は健康な人へ向けたものです。

仕事内容は多岐にわたりますが、メニューの作成や栄養管理は、栄養学の知識が求められます。また、利用者とのコミュニケーションも重要です。対象者の健康状態を理解し、それぞれに適した食事提供、給食管理の実施が、栄養士として重要な業務です。また、調理員とのコミュニケーションも非常に大切で、チームとして一丸となって美味しくバランスの取れた食事を提供するために円滑な関係性を築く必要があります。

そして、栄養士のやりがいは、対象者の健康の改善に携わりその成果を実感できたり、食事の時間を楽しみにしてくれたり、おいしかったと笑顔が見られたり、自分の提案した食事が役立ったと感じる瞬間です。また、栄養士資格取得のための学びは仕事だけでなく、生涯長く役に立つ知識となるでしょう。

これから栄養士を目指す皆さんの参考になれば幸いです。

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