こんにちは!Dietitian job運営会社、東洋システムサイエンスの管理栄養士 廣江です。
今回は、11月29日に開催いたしました「現地開催交流会~林兼産業様とコラボ☆ソフト食おせち交流会~」についてご報告します。
林兼産業の横田様をお迎えし、特別養護老人ホームで就業中の方など様々なご状況の6名の栄養士の皆さんにご参加いただきました。
👉 目次
- 株式会社 林兼産業とは
- ソフト食とは
- ソフト食の良い所
- ①見た目が良い
- ②咀嚼・嚥下が楽
- ③誤嚥のリスクが減る
- ソフト食の課題
- ①コストがかかる
- ②調理の手間
- ③利用者が受け入れてくれないことも
- ソフト食導入の工夫
- ①まずはお昼の1品から
- ②完調品やレトルトの検討
- ③調理素材を活用しよう
- 交流会の報告
- 本日のメニュー紹介・調理の様子
- 気になるお味、実食しながら交流
- 感想
📌関連記事:特別養護老人ホームのおせちの話|嚥下食・ソフト食での工夫と体験談
株式会社 林兼産業とは
「おいしさ」は、生活を楽しく、人生を愉快にするもの。というスローガンを元に食肉加工品機能性食品、魚肉ねり製品、介護食といった食品から養魚用飼料などの製造・販売する食品メーカーです。
今回はその中でも介護食に特化した「まごころキッチン」の横田様にご講師をお願いし、お節料理に今からでも取り入れられる簡単なソフト食レシピのご紹介をしていただきました。
「まごころキッチン」について
高齢者の方に向けたやわらかい食材や栄養を強化した保健機能食品(栄養機能食品)、旬を感じるかわいい和菓子などを展開するオリジナルブランドです。高齢者福祉施設で給食管理業務をしている方には耳馴染みがある方も多いのではないでしょうか。
代表的な商品として
・ニューソーセージ
・ソフミート
・やわらくマルシェ
等の人気商品があります。また、季節の和菓子も人気の商品。行事食の1品やおやつにぴったりの季節ごとに種類豊富な可愛い和菓子は皆さんに喜ばれますね。
💗参考:まごころキッチンの想い|林兼産業
ソフト食とは

嚥下、咀嚼力が低下した方でもなるべく安全に食べていただけるように「噛まなくても良いほど柔らかく」「口内でまとまりやすく」加工された食事の事です。
ソフト食が出てくる前は、嚥下力が低下し噛み切れない・飲み込めない方には刻み食やミキサー食が中心でした。刻み食は口内でばらついてしまい誤嚥のリスクがある点やミキサー食では形が全くない点を払拭するのがソフト食として、近年は多くの高齢者施設で採用されている食形態です。
嚥下食ピラミッドのコード1j~2-1程度が該当するため市販品でも多くのソフト食が現在は販売されています。
参考:これで完璧! 嚥下食~定義や分類、調理のポイント~ –
ソフト食の良い所
ソフト食は加工の際に特殊な加工剤を使用したり、食材をよく煮たり、別で調理が必要等の手間暇がかかる中、多くの施設で取り入れられるようになったのは多くの良い所があるからです。
①見た目が良い
ミキサー食や刻み食はどうしても元の料理の形がわからなくなりがちです。
ソフト食は物性がムースに近く、手やへらで持つことができるある程度の固さがあるため、切って成形することや、型を使うことや、箸などで肉の筋を表現する等で元の料理に近く盛り付けることが可能です。食事の楽しみとして味はもちろん、やはり最初に入るのは視覚。目で楽しめるソフト食は利用者にとって食事の楽しみがより増えますね。
②咀嚼・嚥下が楽
ソフト食は柔らかく・まとまりやすく・飲み込みやすく調整されている食形態なので、噛む力や飲みこみに不安がある利用者にとって食べやすいのがメリットです。噛み切れない、飲みこみにくい食事は食べているうちに疲れてしまい、体力の少ない高齢者は食事を中断・中止してしまうこともあります。最後まで食べきってもらうために嚥下に易しいソフト食の選択はメリットです。
③誤嚥のリスクが減る
上記でも説明したようにソフト食は嚥下に易しい食事形態です。
飲みこみ易く、まとまっていると誤嚥のリスクが下がります。また、舌や歯茎で潰せる柔らかさは食べるのに疲れにくく、最後まで食べきりやすいのもポイントです。疲労してしまうと飲み込みが悪くなり、誤嚥のリスクが上がるものです。そういった面でも本人取って食べやすい、介助をする側にも安心の食事形態と言えますね。(※すべての誤嚥のリスクが減るわけではありません、また、その方の嚥下状態によりミキサー食や刻み食が適する場合もあります。)
ソフト食の課題

そんな良い面が多いソフト食ですが、なかなか導入に踏み切れない理由や、開始したけどうまくかないという課題が幾つかあります。具体的に見ていきましょう。
①コストがかかる
ソフト食の導入や維持にはコストがかかります。
調理するにもソフト食調理用のゲル化剤の使用が必要で、完調品であれば市販のレトルトパウチや冷凍のソフト食を使用すると毎食のコストは跳ね上がります。食材料の価格が上がっている昨今にはなかなか厳しいという声があります。

②調理の手間がかかる、安定しない
ソフト食の調理は、常食からの展開でも手間がかかります。
まずは一度ミキサー等で滑らか、均一にし、ゲル化剤を使用。そのまま器に…ではなく一度固める必要があります。また、見た目にこだわると1品の中でも数回かける必要があり、例えば肉じゃがなら、最低でもお肉や玉ねぎ、じゃがいも、にんじんと3回に分けてミキサーにかけゲル化剤で整形します。
また、物性が安定しないのもネック。水分量や繊維質な食材や人数…なかなか一律の%ではうまくいかないものです。調理する人によって緩い、固いのブレが起こるのも当然あります。
人数が多い施設ではソフト食調理の為の調理員がいる等、常食からの展開に時間や手間暇がかかるのは忙しい現場からするとすぐに導入に踏み切れない理由の一つですね。
③利用者が受け入れてくれないことも
意外と落とし穴なのが、利用者側からの拒否がある事。
ソフト食は物性が均一になるので、全ての口当たりが同じです。また、見た目を形成できても、つるりとしたムース様が受け入れられない利用者からの訴えはあります。お肉らしくない、全部同じに見える等、そういう方は誤嚥のリスクが多少あっても刻み食の方が召し上がってくれるため、結局は刻み食の代替のはずが両方ともなくせない…というご施設が多いのが実情です。
ソフト食導入の工夫

- ソフト食を取り入れたいけどそういうデメリットを考えるとなかなか踏み切れない…
- 家族からソフト食の要望がある…
- 食事をウリにしているのでぜひソフト食も始めたいけど…
そうお悩みの栄養士さんへ、ソフト食を導入する為の工夫をお伝えします。
そしてこの工夫は実際に特別養護老人ホームでソフト食を導入する際にやってみた事なので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
①まずはお昼の1品から
いきなり全てを始めるのはハードルが高いもの。
私がいた施設では「まずはお昼の主菜だけ」で始めました。その場合の名称はソフト食、ではなくて極刻み食(5㎜程度まで刻んだ食事)の方に提供して喫食率や調理の手間等を図る方向で行いました。
・ゲル化剤は納品業者さんへ相談の上幾つかサンプルを選定し決定
・主菜の付け合わせ等はいつも通り
・もちろんケアワーカーやナースにも相談し会議等で共有済
お昼の方が管理栄養士や栄養士の自分たちも含め、ナースやケアワーカーも豊富にいるため、みんなの目が入っていて安心なので、やはりお昼が一番勧めやすいと思います。
②完調品やレトルトの検討
調理をするにも、正解が分からない…それならUDFの「舌でつぶせる」程度のレトルトや完調品をまず導入するのも良い手です。コスト面はかかりますが、①で説明した通り全てではなくて少しずつ導入していけば一気に食材料費がかさむことはありません。
私のいた施設ではお昼の主菜は手作りソフト食とし、人手の薄い朝夕の主菜はレトルトのソフト食を使用していました。
カップに入ったムースのようなものですが(近年は味のバリエーションも多くて選ぶのが楽しかったです。)自分の施設では非常食を兼ねていたのでローリングストックになりこのアイデアはとても良かったです。どうしてもソフト食は1年程度で賞味期限が来てしまいますが、5日分は確保しておきたい…防災の日だけでは使い切れないのでどこでねじ込むか、献立を組み立てる時に忘れないようにするのが結構ネックだったので、日常使いになるのは賞味期限の心配がなくなりストレスフリーでした。
③調理素材を活用しよう
1から作るのは大変!でも完調品やレトルトはコストが…
そんなお悩みには調理素材。行事食の日には林兼産業のソフミートシリーズを使用していました。
蒸した後に好きな形へ成形可能なので人数も味もアレンジも自由に調整できるのと、物性が安定しているのが非常に使いやすかったです。レトルト程コストがかからないのも良く、スチームコンベクションオーブンで煮る等ができるので常食と同時に調理できるのも◎。

ソフト食おせちの報告
ここからは、11月29日に開催いたしました「現地開催交流会~林兼産業様とコラボ☆ソフト食おせち交流会~」についてご報告します。簡単にソフト食のおせちを導入できる工夫もお伝えしているので是非読んでください♪
本日のメニュー紹介・調理の様子
今回は林兼産業 まごころキッチンの横田様に簡単に導入できる祝い膳に使えるレシピをお願いしました!えっこれだけ!?それならできるかも。そう思ってもらえる内容になっています。
魚の黄金焼き
凍ったソフミート白身魚(たら)を丸ごと蒸して好きな形へカット、そこへ黄金餡をかけてバーナーであぶれば完成!バーナーであぶることで焦げ目がついて食欲がそそる色に!

豚の角煮
凍ったソフミートぶたを蒸した後好みの角切りに。
その後市販の角煮のたれを煮詰めてかけるのと、たれで煮込むの2種類調理しました。お味の差や煮崩れ具合や火加減などを実際に体験させていただきました。

紅白お吸い物
ソフミートさけ、ソフミート白身魚(たら)を流水で解凍し、沸騰しただし汁に入れる方法と、キッチンペーパーの上へ好きな大きさへ絞り出し、スチームコンベクションオーブンで蒸す方法の2種類をお教えいただきました。今回は絞り出してオーブンで蒸す方法で。
大きさにより物性が変わらないかをチェックするために色々な大きさで出してみることに。

うなぎのかば焼き風
凍ったやわらくマルシェうなぎ蒲焼風を蒸して好きな大きさにカット。
蒲焼のたれを塗った後にバーナーであぶるだけ。香ばしいかおりが食欲をそそります!

やわらくマルシェシリーズは、ソフミートと異なり魚やお肉の形ができている調理素材です。成形の手間がないので初心者にもおすすめです。
気になるお味、実食しながら交流
調理はあっという間に終了。4品目を30分程度で調理できました。
そして本日の調理にはありませんでしたが、高齢者施設で大人気の寿司のソフト食も一緒にいざ試食。デザートに練り切りとソフトクレープまでついた豪華な試食会でした。

- 「あぶると香りが出て良い!」
- 「汁を後がけで温かいまま提供できる」
- 「うなぎのかば焼きを感じられておいしい!」
- 「色がきれい!」
と、とても好評なご様子でした。
施設でのソフト食のお悩み共有では、コスト面のお話や、調理員から工程が多くてできないと導入に苦労しているお話、物性の不安定さを始め、酢の物はどうしているか?やソフト食の色味の話、委託給食会社の栄養士とのやり取りなど、普段は聞けないここだけのお話ばかり。共感あり、自施設ではこうしているなどのアドバイスもあり、貴重な現場からのお声をたくさんお伺いできました!

いただいたご感想

◎ 実際に調理して試食し、調理方法の味の違いもわかり参考になりました。
◎ 以前から気になっていた商品(ソフミート)の使い方や調理法がわかって良かった。
◎ 試してみたい食材が試せた事、他の施設の方とお話できた事がよかったです。
今回ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました!
次回はオンラインサロン、2026年2月7日(土)に推し献立プレゼン会を開催予定です。ご参加お待ちしています!(参加無料!Zoomでの開催です。)
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