厚生労働省は、今月より、歯全体でかむ力を専用の機械で測定する検査や、かみ砕く機能の検査、口腔機能低下症の人のマッサージ指導などに保険を適用している。

 「食べ物を食べる」という行為は、食べ物を認識し、口腔に取り込み、歯で噛み砕き、唾液を分泌させて食べ物と混ぜ合わせ、飲み込みやすい大きさの塊(食塊)にするところから始まる。
そのようにしてできた食塊を舌で咽頭に送り込む。
舌が持ち上がって、食塊が咽頭に達すると嚥下反射が生じて咽頭を通過する。
咽頭が収縮し食道の入口が大きく開き、食道の壁が蠕動運動をして、食塊が食道から胃に送り込まれる。

 こうした過程を経て食べ物は体の中に取り込まれるので、咀嚼嚥下機能が落ちると、食べ物がうまく食べられず、栄養不足になり、体が弱ってしまうことは容易に想像できる。
たとえ、咀嚼嚥下機能の落ちた状態であっても、意欲的に生活機能を維持するべく、食べやすくて栄養のある食事を提供したいものである。
そのため、咀嚼嚥下機能のレベルによって硬さの異なる様々な形状の食事、軟食(刻み食も含む)、ピュレ食(ミキサー食)、ムース食、ゼリー食などが開発され、どの食事を選ぶかは、咀嚼と嚥下の機能を見て決める。

 このような口腔状態や摂食機能に応じて、何をどのような食形態で食べてもらい、栄養状態を維持・改善し、QOLの向上につなげていくのかは、栄養士や管理栄養士が担うべき役割である。
そのためには、歯科医や歯科衛生士、ケアマネージャー、ホームヘルパーなど多職種との連携が不可欠であることは言うまでもない。

 「虫歯を治す」から「定期的な口のケア」へ、この歯科領域の診療報酬の改定には、予防に重点を置いた内容が盛り込まれたが、この改定は、管理栄養士が地域へ出ていき、どんなことができるのかを示す大きなきっかけにもなるのではないだろうか。

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