筑波大学は7月31日、40歳以上の夫婦約8万7,000組を対象とした解析結果から、夫婦は同じ生活習慣病になりやすいことが明らかになったと発表した。
これは、同大医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野/ヘルスサービス開発研究センターの田宮菜奈子教授、杉山雄大准教授、渡邊多永子元助教(現厚生労働省)らの研究グループによるもの。

生活習慣病の発症に遺伝と生活の両方が関連することはよく知られている。
夫婦は多くの場合、遺伝的なつながりはないが、同居して同じ食事を摂るなど、飲酒や喫煙、運動などのライフスタイルに影響を与え合っている。
生活が似通うため、配偶者が生活習慣病を持つ人は、そうでない人と比べて、配偶者と同じ生活習慣病を発症するリスクが高いと考えられる。
夫婦間での病気の一致、不一致を明らかにすることは、生活の改善によってどの程度生活習慣病を予防できるのかの示唆を得ることにつながる。
また、多くの夫婦が生活習慣病のリスクを共有しているのであれば、夫婦単位で医学的な介入をすることで、生活習慣病の予防、発見、悪化防止に役立つ可能性がある。
他国で行われた先行研究では夫婦が同じ生活習慣病になりやすいことは示されていた。そこで研究グループは、日本における大規模調査を行った。

それぞれの疾患(高血圧、2型糖尿病、脂質異常症)について、夫の各疾患の治療の有無別に、妻が同じ病気で治療を受けている割合を算出し、カイ二乗検定を使用して割合に違いがあるかを検討した。
その結果、夫が高血圧、糖尿病、脂質異常症で治療を受けている妻は、夫がその病気で治療を受けていない妻と比べて、同じ病気で治療を受けている割合が高いことが示された。

生活習慣病の予防、早期発見、悪化防止のためには、患者に加え、患者の家族にも気を配る必要性が示唆された。
更に、家族が共に健康でいる上で、一緒に食事や運動などの生活を改善したり、健康診断を受けたりすることは、多くの人々にとって重要である。
「今後、こうした疾患の一致のメカニズムや、家族が共に健康でいるためにどのような取り組みが望ましいか詳しく研究していく」と、研究グループは述べている。