「キラーフード~あなたの寿命は『酵素』で決まる~」を現代栄養学の視点で読む

<最終更新日2026.1.8>
※本記事は書籍内容の紹介および考察であり、特定の健康法や断食、酵素摂取を推奨するものではありません。

こんにちは、Dietitian Job(ダイエティシャンジョブ)運営会社(株式会社東洋システムサイエンス)大阪人材事業部 管理栄養士の 榎原です。
前回、酵素ファスティング体験談をブログで書かせていただきました。ファスティングからふと、酵素とは・・・?となって、ある著書を読みました。今回はその内容と、現在の栄養学から見たツッコミを入れていきたいと思います。

👉 目次

📌おすすめ:食事時間が不規則だとアレルギー反応が強くなる?~栄養士の気になる話~

今回読んだのはこちら、キラーフード ~あなたの寿命は「酵素」で決まる~という、とってもタイトルが怖い本。表紙もすごく怖いんです。

酵素を生涯かけて研究した、酵素栄養学の父エドワード=ハウエルという方が一般に向けて書籍化した“酵素のススメ”のような本です。
1985年にアメリカで出版をし、日本では1999年に翻訳・出版。
ネットで購入しようとしても、もう流通しておらず、また図書館で借りました。
しかし大阪でも中央図書館にしか所蔵されておらず、受付で申請してわざわざ閉架書庫から出していただくというすごい扱いの御本でございました。

ハウエルはこの本の中で、現代の食べ物の食べ方や調理方法、生産方法、飼育方法により酵素が損なわれ、慢性疾患の原因になっていると訴え、そして生食するものを「酵素食品」して、「酵素食品」の摂取を薦めています。ここでは、本書の考え方を整理したうえで、現代の栄養学・医学の視点からどのように評価できるのかを考えてみたいと思います。

本書で主張されている「酵素栄養学」とは

酵素とはタンパク質で・・・といったことはもちろんわかっていましたが、酵素を摂ることが何に良いのか、なぜいいのかとハウエルは、
・野生生物にはがんや心臓病といった病気がないこと
・母乳育児の方が人工乳での育児に比べて病気の罹患率が低いこと(酵素が母乳中に含まれている)
を根拠として、酵素と病気との関係を考えました。

また、
・生の魚やアザラシを食べる習慣をもつ極北地域の先住民族、エスキモーは、心臓病や腎臓疾患の発症が非常に少ないこと
・長寿で知られるブルガリア地方の方は生の牛乳や乳製品をとっていること
などから、生で食べることが慢性疾患の予防に重要であると結論付けています。

生で食べることをススメている

ハウエルはこの本で、7.5:2.5の割合で生食を多くとることを推奨しています。
また、O-157等の食中毒により加熱調理が必須になったことや電子レンジの登場により不健康を助長したと、強く生食推しです。
生物には、植物も動物も生体内に酵素をもっていて、人間はそれらを食べることで酵素を摂取できる。
しかし加熱や加工処理により酵素は壊れてしまうということがわかっています。例えば、牛乳は加熱殺菌により、またオリーブオイルは精製されることにより本来含まれている酵素、リパーゼを失っているのだと言います。

だからハウエルは生で食べることが重要だとしています。
食物の中の酵素によって消化酵素として働き胃腸での消化活動を助けたり(大根などが有名ですよね)、食物内で事前に自己消化がされていたりすることで、本来消化に必要だった酵素の分泌を節約することができるそうです。そして、節約し温存した酵素を他の酵素反応に回すことができると言っています。これは「適応分泌の法則」というものによるもので、食べたものに対して必要な量の酵素を体内で生成し分泌することができ、そうやって、酵素を食べ物からも摂取することで消化に使われる体内の酵素を節約し、健康・長寿を得ることができるとハウエルは考えています。そして、エスキモーの生食の風習やブルガリア地方の生の乳を摂取する健康法も、非加熱であることで酵素を食物から摂取しているため、慢性疾患の発症が少なく、健康長寿につながっているとしています。

体内酵素を温存する方法

ハウエルいわく、体内酵素を温存するには、

・食物(酵素)を生で摂ること
・サプリメント(栄養補助食品)として摂ること
・断食

を、著書内であげていました。温存というより補給というニュアンスでしょうか…

さて現代の栄養学に当てはめてみましょう…

① 食物中の酵素は体内でそのまま働く?

現在の栄養学では、食物に含まれる酵素は、消化管内でタンパク質として分解されると考えられています。
つまり、食物中の酵素が体内で消化酵素として直接機能するという考え方は、ヒトを対象とした研究では支持されていません

大根に含まれる酵素が消化を助ける、といった表現が使われることもありますが、これは限定的な条件下での話であり、健康効果を一般化できるものではありません。
摂った食物…特に蛋白質は胃・十二指腸・小腸で分解されて吸収されることは栄養士の皆さんならご存知ですよね。酵素も例外ではありません。摂取してそのまま体内で使う…ということはできず、基本的には分解され、吸収されるのです。

② 生食・非加熱食品の健康効果について

生の食品には、ビタミンや食物繊維を効率よく摂取できるものがある一方で、

食中毒リスク
消化吸収のしにくさ

があります。
そして更に、加熱によって吸収率が高まる栄養素(βカロテンなど)の存在といった点も考慮する必要があります。「生で食べること=健康に良い」と一律に結論づけることはできず、調理法は食材や個人の体調に応じて選択することが重要です。
この現代で生肉にかぶりつく人はそういませんね。

③ 「体内酵素は有限」という考え方について

本書では、体内酵素は生涯で使える量が決まっており、節約することが重要だとされています。
しかし、人体の酵素は遺伝子の働きによって常に合成・分解が繰り返されており、使い切ると枯渇するものではありません

加齢に伴う代謝や消化機能の変化は確かに存在しますが、それを「酵素の消耗」という単一要因で説明することは、現代医学では行われていません。

④ 疫学的事例の扱いについて

本書で紹介されているエスキモーやブルガリア地方の人々の健康状態についても、
現在では医療環境、生活習慣、社会背景など複数の要因が影響していることが分かっています。

特定の食習慣(生食・酵素)だけを健康や長寿の理由として説明するのは、因果関係としては不十分と言えるでしょう。

では、本書は全く価値がないのか?

現在の知見と照らし合わせると、専門的な理解がないまま実践することは推奨できない内容が多いと感じました。(現在では参考文献として入手しづらい点も含め、時代を感じる部分があります。)
ならこの本に価値がない───とは言い切れません。

本書は、
食べ方や加工のあり方を見直す
現代の食生活を疑問視する
といった視点を与えてくれる点では、一定の意義があります。

また、抗酸化酵素や体内での酵素反応が生命維持に重要であること自体は、現在の科学でも明らかになっています。
ただし、それらを「生食」「酵素摂取」「断食」と直接結びつけ、健康法として推奨することには科学的根拠が不足している、それだけの話なのです。

まとめ・酵素栄養学はないけれど

本書で語られている「酵素栄養学」は、現在の栄養学・医学において確立された理論ではありません。
一方で、「食生活を見直すきっかけ」「食べ過ぎや加工食品への警鐘」として読むのであれば、考えさせられる部分もあります。

重要なのは、

この本に限らず、書籍やネットの主張をそのまま健康法として実践しないこと
科学的根拠(ヒト研究・ガイドライン)と区別して理解すること
体や健康に関わる情報ほど、「誰が・いつ・どのような根拠で述べているのか」を見る

様々な情報に対し、冷静に判断する力が大切だなと改めて思いました。

最後に・・・

著書では最後に、日本では酵素が流行しておらず、 その理由として、酵素・消化に関わるサプリメントが少なく、あったとしても医薬品が多く胃薬感覚であることを挙げています。現場の栄養士が学ぼうとせず古い栄養学を次世代に引き継ごうとしている。とも。
…思いがけず、頑張らないといけないなと感じる一冊となりました。常にアップデートしていきたいですね。

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