栄養士のフリーランスまでの道のり、開業するには

<最終更新日2025.9.22>
管理栄養士としてフリーランスや独立される方が増えています。やりたい仕事、自分の専門知識をフルに生かせる、時間配分を自由にできる、年収アップ…の反面、何から始めたら良いか分からない、収入が安定しないのでは、という不安はついて回るものです。このコラムでは管理栄養士のフリーランスについての解説と、実際に開業された外部執筆スタッフの体験談を紹介いたします。
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目次

管理栄養士の開業、具体的にどんな仕事がある?

管理栄養士としてフリーランスで独立をする場合、以下のようなものがメジャーです。

  • 食・栄養相談(一般向け/企業の健康支援)
  • 特定保健指導
  • ダイエット・生活習慣改善の伴走支援
  • レシピ・献立開発、商品監修、コンテンツ監修
  • フィットネスジム・歯科・保育園・介護施設への巡回指導
  • セミナー・研修等の講師
  • 書籍出版・レシピ開発・監修
  • など。
    栄養指導から講師まで様々な面から健康や食に携わることができます。

    開業のメリット

    自分の得意分野(特定保健指導・食育・レシピ開発など)を事業化できる

    一次予防に携わりたい、得意なレシピをもっと広めたい、仕事をするうちに強く感じた思いを形に出来るのは開業、フリーランスだからこそです。
    会社員として働く場合は配属先や担当業務に左右されますが、開業すれば自分の専門分野や強みにフォーカスでき、やりがいを感じやすいのが大きな魅力です。
    特定保健指導、食育、レシピ開発、企業向けのセミナーなど、管理栄養士として培ったスキルをそのまま事業にできます。

    ライフスタイルに合わせて働ける

    働く時間・場所を自分でコントロールできるため、子育てや介護と両立しながら活動する人も多いです。
    最近ではオンラインで完結できる栄養相談や講座の人気も増えており、地盤がしっかりとすれば、次第にリモート環境を活かした柔軟な働き方が可能になるでしょう。

    地域や社会への直接的な貢献

    自治体と連携した健康教室、企業の健康経営サポート、学校や地域イベントでの食育など、開業すれば活動範囲を自分で選べます。自分の知識を社会に還元できることで、専門職としての存在意義を実感できるのもメリットです。

    開業のデメリット

    安定収入が保証されない

    会社員のように毎月決まった給与が入るわけではなく、案件数や依頼内容によって収入が変動します。特に開業初期は仕事が安定しにくいため、生活費をカバーする資金の準備や副業との併用が現実的です。

    経営・営業・集客など、栄養指導以外のスキルも必要

    開業は「栄養の専門家」であると同時に「経営者」になることです。
    顧客との契約や料金設定、SNS発信や営業活動、確定申告等の税務処理など、事業を続けるためには幅広いスキルが求められます。栄養士としての仕事以外の作業に時間を割く必要があることも理解しておく必要があります。

    初期投資の負担がある

    事務所を借りる場合は家賃や設備投資、オンライン開業でもパソコンやソフト、広告費といった初期費用がかかります。さらに資格更新や研修参加など、専門職としてスキルを維持するための投資も必要です。事業を軌道に乗せるまでの資金計画は欠かせません。

    管理栄養士の開業前にやる事

    開業前には開業届や名詞だけではなく、事業の方向性を決め、計画を立てることが不可欠です。

    目標設定

    開業に向けた目標設定は非常に重要です。具体的な目標を設定することで、進むべき方向が明確になります。特定保健指導と同じですね。
    たとえば、収入の目標や月の保健指導の件数など、数値で示すことで達成感を得やすくなります。

    さらに、短期的な目標と長期的な目標をバランスよく取り入れることも大切です。短期的な目標が達成できるとモチベーションが上がり、長期的なビジョンに向かうための力となります。しっかりとした目標設定を行うことで、フリーランス・開業後の成功へとつなげることができるでしょう。

    市場調査とビジネスプラン作成

    具体的にどの方向で開業をしたいかの目標設定の後は市場調査が必要です。市場調査は、開業の成功に向けた基盤を築く重要なステップとなります。ターゲットを理解し、対象者だけではなくクライアントのニーズを把握することで、効果的なアピールをすることができます。具体的に、セミナーの講師を目指すなら今流行っているものは何か、どういった内容が求められるのか、自分の経験や資格をより活かすには、と現状を調査し、それに合ったアップデートが必要になります。

    次に、ビジネスプランの作成が必要です。事業の目的、提供するサービス、収益モデルなどを明確にまとめることで、開業後の方向性を定めることができ、自己アピールの際にも有利に働きます。

    マーケティング戦略

    マーケティング戦略は、開業において成功を収めるための重要な要素です。まず、自身の強みや提供できるサービスを洗い出し、ターゲット層を明確にしましょう。

    次に、効果的なプロモーション方法を検討します。SNSの活用や地域イベントへの参加、セミナー開催など多様な手段があります。管理栄養士のフリーランスとして活躍する方には、業務委託を中心に受けられる方が多いです。クライアントと関わるためには、仕事へ繋げるには、多くの人とのコネクションを増やすのはとても重要です。

    また、顧客やクライアントの声を活かしてサービスを改善し、リピーターを増やす努力も不可欠です。これにより、持続的な関係を築くことができ、安定した集客につながります。クライアントからの良い評価は、また別の仕事を受託することにも繋がります。

    正直な資金面、制度や法律等

    管理栄養士として開業を考える場合、専門知識だけではなく、事業を運営するための準備も欠かせません。いきなり全て開業で賄えることは少ない為、初期はパートや業務委託中心で収入を補う方も多いです。

    大体の収入

    一般的に、独立初期の年収は200~300万と言われています。それに加え、初期費用の広告費や宣伝費、IT周りを整える設備費等がかかってきます。
    収入や事業がしっかりするまでは安定したパートや業務委託と平行すると良いでしょう。
    段々とコネクションが増える、知名度が上がる等でセミナー講師活動や記事監修など様々な業務形態を組みあわせが増えていった結果、500万円以上の収入を得ている管理栄養士もいます。

    法律・制度や契約は複雑

    特定保健指導や栄養指導業務を行う場合は、栄養士法や食品表示法などの関連法規を把握しておくことが必要です。契約内容や守秘義務も含めて、専門職としての責任を理解しておきましょう。

    また、顧客との契約書の作成や報酬体系の明確化など、法的なトラブルを避けるための仕組みづくりも重要です。必要に応じて、行政機関や弁護士・司法書士などの法律や制度の専門家に相談するのはとても良い方法です。
    開業初期からリスクを最小限に抑える意識を持っておくことで、安心して業務に専念できます。

    ここからは実際の開業体験談になります。

    実際の開業体験談

    こんにちは。外部執筆スタッフの管理栄養士 長谷川晴美です。

    前回までは、フリーランスになるか迷われている方に向けて、そして、フリーランスになると決めてから退職までの道のりをお伝えしました。

    今回は、退職から開業日までの過ごし方や、開業後、そしてコロナ禍の影響等をお伝えします。

    皆様にとって、何かのヒントになれればと存じます。

    退職から開業日まで

    開業

    縁もゆかりもない縁起のいい日を開業日とし、どのような仕事か検討がつく屋号に決め、まずは以下のような準備を進め、開業日を迎えました。

    1.税務署に出向き、開業に必要な書類と書き方、提出の仕方等を確認

    2.個人事業主や帳簿関係に詳しい知人をリサーチし相談

    3.無料のホームページ作成サイト(Jimdo)で、 理念、経歴、仕事内容、値段、写真等を確定しながら作成

    4.名刺にホームページのQRコードを入れる

    5.自分の経歴だけでなく、自分の強みや志などをまとめたプロフィールシートを作成

    開業後

    申請自体は書類を税務署に提出するだけで、あっけないものでした。

    開業後は、青色申告会の無料講習会や無料相談を利用しながら、見積書や請求書作成、帳簿の付け方、確定申告について学びました。

    青色申告会には入らず、今も調べながら聞きながら、なんとかできています。

    お金の話 (出費と収入)

    次にお伝えしておきたいことは、お金の話です。

    趣味で仕事をしている人は少ないと思います。

    私はバツイチ子持ちで一家の主なので、収入なしは死活問題です。

    収入と生活は切っても切れないもので、綺麗ごとでは済まされません。

    開業にはお金はかかりませんが、以下のように会社員の時よりは目に見える出費が増えます。

    私が給料明細を細かく見ていなかっただけですが・・・

    退職金があれば残しておきましょう(^_-)-☆

     【支出】

    1.市県民税(退職後はまとめて支払い、その後は年4回支払い)

    2.国民健康保険・国民年金 ※参考までに私の場合は毎月計約6万円

    3.経費を引いた収入の税金(確定申告時)

     【収入】

    開業直後に、目標収入を決めておこうと収入の把握をしてみました。

    当時の契約状況で本気で一か月働いてみたら50万円ほどでした。

    翌月、遊んだ月はどうなるかと一週間アフリカ旅行に行ってみたところ35万円ほどでした。

    会社員の時の年収と比較し、収入アップできることが確認でき、安定はしなくても健康であれば収入はあるという結論でした。

    そこで、現状に甘んじることなく収入目標を高く持つことにし、次はプロフィールシートを確認しながら、何をやりたいか、何ができるか、どのように実現させるかを考え今も実践しています。

    雇用保険の給付について

    次が決まっていない状況で辞めた場合は、ハローワークに離職時求職者給付を受ける手続きができます。

    雇用保険がもらえる範囲で期間限定のイベントの仕事をしながら就職するかフリーランスになるか考えている管理栄養士さんにも出会いました。

    その間に、定職を決めるもよし、フリーランスの道に踏み切るもよしです。

    失業保険支払期間中に、フリーランスと決めた場合でも、業務委託契約書等の見込み収入がわかる書類を提出し認められた場合は、再就職手当に準じ、開業祝としていただけます。

    知識として持っておいて損はなしの情報です。

    開業してからの動き

    目の前の仕事に手を抜くことなく一生懸命行うことをモットーに、相手の満足度を上げることも念頭においています。

    また、経費削減や効率も考えながら、営業や値段交渉も行っていきます。

    仕事のチャンスを広げるために、日々の会話の中にも自分の仕事や強みをアピールし、自然に名刺を出せるようにも意識しています。

    今までなら行きもしない高校の同窓会にも行きました。

    用意していった100枚の名刺はさすがにあまりましたが・・・(≧▽≦)

    特定保健指導の経験を話していたところ、他の会社から特定保健指導の仕事が舞い込み、経験を積むことができ比較もできると考え、お受けしたことがあります。

    資料の違いや入力の違いがあるため、多数の会社との契約はミスにつながりやすいと感じました。

    また、継続支援なし初回面談のみの案件は、最後まで支援したいという思いを強く感じる自分がいました。

    最後まで支援できる契約のものがいいと考えました。

    このような形で、仕事の選択もしています。

    他には、管理栄養士以外にも健康運動指導士と認定心理士の資格があることもアピールしていたので、健康系セミナーの依頼もありました。

    健康維持には、食事と運動と心だと考え、30歳代、40歳代に取った資格が役立っています。

    仕事ぶりをみていただき、新たな依頼もあります。

    派手な仕事はしていませんが、地道に信用を積み重ねています。

    過去反省点・フリーランスのメリット

    開業までの反省

    私生活も会社員の時も、アナログ派で新しいことには積極的ではなかったため、パソコンの設定、パワーポイントの細かい装飾等は得意な人に任せ、SNSは極力避け、人脈作りもしていなかったことを、もったいなかったなあと感じていますが、今頑張ってます(^^♪

    また、開業当初は、出張が楽しくて飲み食いしすぎて、BMI25未満を維持することが大変でしたし、稼いだ分遊んでしまいました。

    反動とは恐ろしやです・・・(>_<)

    現仕事のメリット

    特定保健指導は受けたくないかたもいるので、かなり悪態の方もいらっしゃいます。

    しかし、合わなくても悪態をつかれても、その場限りと思えば、心をすり減らすことはありません。

    会いたくない人に毎日会う苦痛はないです。

    自分の責任の上で、仕事の選択をすることができますし、自由にコーディネートできるのが魅力です。

    あれこれ指図されたくないタイプの人には向いているかと思います。

    コロナ禍での体験

    初で、自分で集客から会場の段取りまで企画していたセミナーは中止になってしまいました。

    私は、アレルギー体質で3歳のころからアトピー性皮膚炎なので、この欠点とも言えるべき体質を逆手に取り、その経験をもとにしたアレルギーに関する健康セミナーを開催する予定でした。

    会場費は返金がありましたが、宣伝費は無駄になってしまいました。

    が、セミナーの内容をより充実させる時間ができたと前向きにとらえています。

    メインの収入源だった、イベントや対面の特定保健指導も中止になってしまいました。

    そこで、特定保健指導は避けていたICT面談に切り替えることにしました。

    これも成長するきっかけになったと考えています。

    ちなみに、今回のコロナの影響で収入は月20万円台に落ち込みましたが、ゼロではないですし、持続化給付金の申請もできましたので、しぶとく生き延びています!

    私の目標

    年収700万円を超えたら、法人にするというのがフリーランスになった時にたてた目標です。

    定年のない、一人一人が好きな仕事、得意な仕事で力が発揮できる環境が提供できる会社です。

    今回のコロナ禍で思い知らされたことは、先を急いでなくてよかった!

    貯金はあったほうがいい!

    ということです。

    働いている人の生活を支えられる強く持久力がある会社を作ることが、新たな目標に付け加わりました。

    まだまだ、人生これからです。より成長し生涯現役!を目指します。

    今後、いい報告ができるよう日々頑張っていきます。

    最後まで、お読みいただきありがとうございました。

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