栄養管理に必要な薬の知識講座 ①②

こんにちは。
DietitianJob運営会社 東洋システムサイエンス栄養士の山田です。
今回は、2024年11月17日(日)に実施した「栄養管理に必要な薬の知識講座①~嚥下にも関わる精神系に作用する薬~/②~日常に密接な腸内環境に作用する薬~」の様子をご紹介致します。

本講座は、病院・調剤薬局、介護施設、専門校の講師と幅広くご活躍されている、薬剤師の佐伯有美先生を
講師としてお招きし、zoomを使ったオンライン講座で実施しました。
栄養管理する現場で、患者様・利用者様の服用されている薬の名称を聞いたり見たりする際、どんな薬だろう?と思われる事あると思います。そんな方に向けて、薬の姿を学べる講座となっております。

当日のラインナップはこちら
<栄養管理に必要な薬の知識講座①
1.脳内物質と心のバランスのしくみ
2.睡眠薬・抗不安薬について
3.抗うつ薬・抗精神病薬について
4.認知症治療薬について
5.その他、てんかん・パーキンソンなどに使用する薬について

<栄養管理に必要な薬の知識講座②
1.便秘の分類と便秘を起こす可能性がある薬
2.便秘薬(下剤)について
3.下痢の原因と下痢を起こす可能性がある薬
4.下痢止めについて

栄養管理に必要な薬の知識講座①

精神疾患は、明確な検査数値による疾患区別はできないのですが、各疾患と関連が予測される神経伝達物質は明らかになっているため、それらの働きと疾患との関連を表にまとめていただきました。
ノルアドレナリン、セロトニン、ドパミンなどの物質名は聞き馴染みがあるかと思いますが、それぞれ過不足が起こることで精神疾患に繋がるといわれています。
しかし、「頭の中」はとても複雑なのでこれらの関係性には未だ仮説が含まれているとのことでした。
続いて薬の話に入っていきます。

抗不安薬について

分類は大きく3種類、主として使われている①ベンゾジアゼピン系②抗ヒスタミン剤と、あまり使用されていない③セロトニン作動性抗不安薬になります。

適応症となっている「心身症(心の不調が体に出た状態)」などの解説や、それぞれの薬の成分がどこに働きかけているのかを脳の図解を使って解説いただきました。

副作用・注意点としては①ベンゾジアゼピン系は筋弛緩作用があり嚥下障害の原因になることがあること、
②抗ヒスタミン剤はアレルギー薬としても使用されるが、抗コリン作用を持つので使用注意や禁忌の疾患があることです。
抗コリン作用で起こる反応についても詳しくご説明くださいました。

薬には「消失半減期:血中濃度が半分になるまでの時間」があるのはご存じですか?
半減期が長いほど効果が持続するため、それを根拠に薬の飲む回数が決まっているそうです。

睡眠薬について

一般的に知られる一晩の催眠サイクル、不眠症の分類、どのような人がなりやすいのかを踏まえて不眠症の原因を詳しく、わかりやすくご解説くださいました。
睡眠薬の分類は大きく4種類です。

催眠作用が強く構造が似ている①ベンゾジアゼピン系・②非ベンゾジアゼピン系は、それぞれが作用する受容体の差や使用上の注意点と副作用についての詳細をお示しいただきました。
②メラトニン受容体作動薬は寝つきが悪い方へ、④オレキシン受容体拮抗薬は早く目覚めてしまう方へ向くなど、不眠のタイプに合わせて処方できる薬がある事を学べました。

抗うつ薬について

うつ病の概要と、治療薬の選択に関わる神経伝達物質不足の仮説について説明いただきました。
重要な働きをするセロトニン受容体の種類と働き、体内分布のほとんどが消化管であること、セロトニンの増やし方について詳しく解説いただきました。

中枢神経に作用する薬の副作用や特徴の1つとして、急な服薬中止で離脱症状を起こすものがあるということで、怖さを感じつつ、何か食生活から改善できるものはないかと考えさせられました。

抗精神病薬について

適応となる主な疾患である統合失調症は若年層での初発が多いなど疾病について伺えました。
仮説ですが、陽性症状はドパミン過剰、陰性症状はドパミン不足が原因と予想されていて、薬は陽性症状のみに使用できるものと、陽性と陰性両方に使用できるものがあるそうです。

栄養士として気を付けておきたいのは、嚥下障害や血糖値上昇などの副作用がみられることがある点です。

認知症治療薬について

分類とそれぞれの症状・脳内の状態の話がありました。
アルツハイマー型認知症はアセチルコリンの減少とグルタミン酸の過剰が関連すると考えられているそうです。

「え!グルタミン酸?」と思いますよね、ここで言うグルタミン酸は体内で作られるアミノ酸の一種です。

治療薬には、アセチルコリンの働きを強くするもの、グルタミン酸の働きを抑えるものがありますが、あくまでも進行予防目的で、どの薬も少量から、副作用の様子を伺いながら使用されます。
完治する薬ができればいいのにと思いました。

他にも、気分安定薬、パーキンソン病治療薬、てんかん治療薬の説明と各注意点などに加え、最後にまとめも行っていただき、難しい精神系の話が理解しやすかったです。知識は持っていて損はないですね。

栄養管理に必要な薬の知識講座②

腸内細菌と整腸剤

腸内には善玉菌・悪玉菌・日和見菌が存在していますが、その数や種類は個人差があるそうです。
そこに働きかける整腸剤も複数種類あり、聞きなれたラクトミン製剤やビフィズス菌製剤の他色々特徴をお話しくださいました。
抗菌剤の使用で腸内細菌のバランスが乱れることもあります。

又、心の安定に重要なセロトニンの大部分は消化管に存在するそうです。
脳腸相関ともいいますので腸の調子を整えることは大切です。

便秘と便秘に使用する薬について

便の成分、便秘の分類(機能性便秘や器質性便秘、薬剤性便秘・他)を伺い、奥が深いと驚きました。

下剤は、大腸をしっかり動かすものと水分で便を柔らかくするものに目的が別れます。
大腸以外に働きかける薬や漢方薬にも少しふれてくださいました。

各製剤の注意点と使用状況の話から、妊婦禁忌、高齢者には向かないなど年代などでも気を付けて使用しなければいけないものがあると知りました。
薬の副作用による便秘には、精神系の薬(抗コリン作用)の中にもあるそうです。

下痢と下痢に使用する薬について

下痢は、便中の水分が70%以上1日に200g以上の排便がある場合をいい、急性と慢性に分類されます。

下痢の治療ではまず原因疾患の治療や食事療法などを行い、薬はむやみに使用しない方がよく、特に感染性の下痢は体外へ病原微生物を出したいので基本的には下痢止めを使用しないそうです。

上記をふまえ下痢止め薬をご紹介いただきましたが、下痢止めの中には、透析や腎臓疾患に使用禁忌のものもあり、栄養士としては知っておくべきだと思います。

一般的な下痢 以外の疾患

過敏性腸症候群は原因不明で下痢や便秘が起こり、原因はストレス(脳腸相関)・細菌による粘膜炎症・遺伝的要因ではないかと考えられています。
治療薬の中に男女で服用量が異なるものがあり、珍しいそうです。

薬による下痢

下痢を起こす可能性がある薬について、抗がん剤や抗菌薬のほか、可能性がある薬はかなりあり、市販薬も可能性があるとのことですので、薬を使用しているときの下痢・便秘に関しては副作用を疑ってみてもいいでしょう。

最後に「便秘や下痢は原因が重要、下剤に関しては耐性に注意が必要」と要点をまとめていただきました。身近な疾患だけに気をつけたいですね。

薬のご紹介

テープ剤と液状の薬

水剤(滴剤)、座薬、浣腸他

参加者の声(一部抜粋。記述は回答のまま)

<栄養管理に必要な薬の知識講座①>
〇すぐに業務に取り入れられる内容でとても参考になりました。薬は苦手意識があったのですが、資料もわかりやすかったです。他職種にも情報発信しながら業務に役立てたいと思います。ありがとうございました。

〇よく用いられる疾患の薬を盛りだくさんにわかりやすく、解説していただきよかったです。

〇薬の知識がほぼなかったのですが、昔から薬のことにとても興味があり受講しました。 今は栄養相談等の業務にはついていませんが、家族が抗うつ薬と睡眠薬を服用しているので、とてもよく理解できました。 うまみ成分と認識しているグルタミン酸に、こんなにも精神に関わる働きがあると知り、驚きました。半減期の話、抗コリン作用、催奇形性の危険がある薬などなど、初めて聞く話が多く、受講して良かったです。 また、認知症の薬は知りたかった薬の一つだったので、学べて良かったです。 今は家庭の事情で従事できていませんが、いつか栄養相談をしたいと思っています。その時のために、ずっと学びたかった薬の知識をもっと学んでおきたいと思いました。

<栄養管理に必要な薬の知識講座②>
〇下痢や便秘は入居者様にとても多いですが、本日の研修を参考に原因を考えるようにし、栄養管理に繋げていければと思いました。ありがとうございました。

〇仕事で気になる事があった事もあり、受講しましたが、 仕事以外の 自身や身近な人にも当てはめられるような内容であって 勉強になりました。 また基礎的な部分から教えてくださったり、実際の患者様のお話や関連するお話も聞けた事・薬剤の実物を拝見できた事も貴重でありがたく拝聴しました。 またタイミングが合えば参加したいと思います。ありがとうございました。

〇病院で使用している薬が出てきていて明日から栄養管理に活かせそうです。

Dietitian Jobでは今後も栄養士・管理栄養士の皆様の日々の業務に少しでもお役に立てるセミナーを開催していきます。ぜひご参加くださいね!