
こんにちは!DietitianJob運営会社 東洋システムサイエンス管理栄養士の徳田です。
今回は2024年12月7日に開催された「学びなおそう!生理学~栄養指導講座(代謝編)~」についてご紹介します。
本講座は、現在は順天堂大学病院でご勤務しており、長年栄養指導に携わっている小池先生をお招きしてオンライン(ZOOM配信)で開講しました。
弊社では小池先生による多数のセミナーを開催しておりますが、この講座は苦手意識を持つ方も多い生理学分野を学びなおせる栄養指導初級講座となっています。
当日のラインナップはこちら
1.糖質の代謝と検査値
2.脂質の代謝と検査値
3.たんぱく質の代謝
4.血圧に関する検査値
糖質の代謝と検査値
糖質の種類と構造
まずは炭水化物、糖質、糖類という言葉がそれぞれどの範囲を指すのかと、それぞれの構造を確認します。
一般の方は厳密にその区別をしていないことも多いですが、専門職としては患者さんや保健指導対象者に違いをわかりやすく説明できるようになっておきたいですよね。
糖質の消化吸収と体内代謝
終末消化(膜吸収)と吸収についての説明では、栄養素を吸収できる面積を増やすための小腸内の構造について「絨毛をマイクロファイバーのバスマットをイメージして」と簡単に想像できるものに例えていただきました。
終末消化とは、消化の最終段階と吸収の最初の段階が微絨毛において同時に行われていることを指します。
糖質は、口や十二指腸でアミラーゼによって単糖類・二糖類になった状態で小腸にたどり着きます。
微絨毛の表面には終末消化酵素が存在しており、単糖類はそのまま、二糖類以上は終末消化されて単糖になって吸収されて門脈経由で肝臓へ運ばれます。
血糖値、病態との関係
血糖値とは「血液中のグルコース(ブドウ糖)」の濃度です。
したがって、単糖といえどフルクトースとガラクトースは食後血糖値に原則影響を与えません。
吸収されたグルコースは脳や赤血球、各細胞のエネルギー源として利用されます。
血中のグルコースを各組織へ取り込むときに働くのがインスリンで、インスリンの作用不足で血糖値が高い状態が続くことが糖尿病の成因となります。
糖質制限は有効なのか
糖質制限食が流行していますが、日本糖尿病学会の結論としては長期的な遵守性・安全性のエビデンスが十分に揃っていないことなどから「炭水化物のみを極端に制限して減量を図る」ことは現時点では薦められないとなっております。
国内外で議論が続いていますが、現状としては全員に安全で有効な手法としては薦められないため、糖質制限をした場合に体内で何位が起こるのかを理解したうえで各指導者が目の前のひとりひとりの状況に合わせた提案をすることが大切だと再認識しました。
脂質の代謝と検査値
脂質の種類
体内の脂肪には、中性脂肪(粗暴)、コレステロール、リン脂質、遊離脂肪酸があります。
中性脂肪は1つのグリセロールに3つの脂肪酸が結合する形をしており、脂肪組織や血中に多く存在します。
脂肪酸は「二重結合の数」「二重結合の位置」「炭素数の長さ」で分類できます。
飽和脂肪酸は肉・乳製品に多く含まれます。一価不飽和脂肪酸はオリーブオイル、n-3系多価不飽和脂肪酸は魚、n-6系多価不飽和脂肪酸は植物油が代表的ですが、脂肪酸組成の表をみると100%どれか1つで構成されているわけではないということがわかりました。
先生が図解してくれるため、改めて飽和脂肪酸、一価の不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の構造の違いをしっかり理解できました。
脂質の体内代謝
食事中の中性脂肪(トリアシルグリセロール)は脂肪酸とグリセロールに分離した状態でそのまま吸収されすぐに中性脂肪に再合成され、リンパ管に取り込まれます。
脂質は水に溶けないため、体内ではリポたんぱく質に包んでもらって運搬されています。この運び屋がキロミクロン、VLDL、LDL、HDLです。
キロミクロンとVLDLの中には中性脂肪が、LDLの中にはコレステロールが、HDLの中にはタンパク質がそれぞれ一番多く含まれます。
脂質に関する検査値と病態との関係
脂質異常症の検査項目はLDLコレステロール値、HDLコレステロール、TGがあります。
LDLコレステロールが上がる原因としては飽和脂肪酸やコレステロールの多い食品の過剰摂取など、中性脂肪が上がる原因としては中性脂肪の減量となるショ糖・果糖・油の過剰などが挙げられます。
食事記録から原因を推測する際、脂質の種類とそれが多く含まれる食品を覚えておけば適格なアドバイスができるようになると感じました。
たんぱく質の代謝
たんぱく質の体内代謝
体たんぱく質を構成するアミノ酸の種類は20種類あり、体内で合成できるかで区別されて「必須(不可欠)アミノ酸」もしくは「非必須(可欠)」アミノ酸と呼ばれています。
食事中のたんぱく質は消化管を通過して分解され、アミノ酸や低分子のぺプチドの状態で小腸にたどり着きます。
ペプチドは微絨毛で終末消化されてアミノ酸として吸収され、門脈経由で肝臓に運ばれ、代謝されるか血中に放出されます。
これらのアミノ酸は臓器、筋肉、髪、ホルモン、酵素といった各組織の材料として分解と合成を繰り返しています。
各組織で分解された体たんぱく質のアミノ酸のうち70%が再利用され、残り30%は分解されてエネルギー源として利用されるため、不足する30%分を食事から新たに吸収します。
組織ごとに完全に細胞が入れ替わる周期が異なっているというお話がとても興味深かったです。
近年のプロテイン摂取の傾向について
筋トレブームから始まったと思われる「プロテイン」について、たんぱく質の推奨量、目標量の表をお示しいただきながら見解を伺いました。
活発に活動していない人と高強度のトレーニングを断続的に行っている人では体重あたりに必要なたんぱく質量は異なるが、おおむね2g/体重㎏以上は摂取しても有効に利用されないので積極的におすすめはしないとのお話でした。
また、1日の普通の食事でもたんぱく質60gを摂取できるというイラストもご用意してくださっていて、食べたものは化学反応の材料となるので、過不足なくバランスよく食べることが大切だとお話しいただきました。
血圧に関する検査値
血圧が高くなる仕組み
そもそも血圧とは何を指すのかという説明から、血圧が上がる仕組みについて教えていただきました。
血圧上昇の仕組みの1つが「循環血液量の増加」ですが、これは塩分摂取量の過多が原因となるので、食事でコントロールができます。
体内では血中のNa濃度は一定に保たれていますが、食事から大量のNaが入ってくると一定の濃度を保つために水で薄めようとします。その結果、循環血液量が増えて血圧の上昇に繋がります。
血圧が高い方はしょっぱいものに気を付けるというのはかなり世間にも知られている対処法だと思いますが、そのとき体内で何が起こっているのかと具体的に減塩のための工夫を示せるのが栄養士だと思います。
先生が実際にしているアドバイスの実例も聞けて大変有意義な時間になりました。
参加者の声(一部抜粋。記述は回答のまま)
〇基礎的な知識の振り返りもでき、栄養指導にすぐ使える知識もいただけて、勉強になりました
〇最近の論文なども交えてお話しいただいたことがためになった。自分が国試を受けた時からアップデートされていることがたくさんあると思うため,またこのようなセミナーがあれば受講したい。
〇講師の先生のお話がとても分かりやすく、基礎的な事でしたが確認できた点が受けて良かったと思いました。 また気さくな感じで実際の患者様対応のお話をしてくださった点もとてもありがたく 今後の参考にしたいと思いました。
セミナー担当として何度も聴講しているのですが、毎回新しい発見があります。
説明を聞いたその瞬間はわかった!と思うのですが、一度では理解できないこともあり、受講後の復習が大切なのだと感じます。
今回受講できなかった方、以前一度受講したことがある方も是非またご参加下さい♪
Dietitian Jobでは今後も栄養士・管理栄養士の皆様の日々の業務に少しでもお役に立てるセミナーを開催していきます。
引き続きご参加をお待ちしております。