食育基本法2026年改正│栄養士と食育はどう変わる?

2026年5月、食育基本法が約20年ぶりに改正されました。
食育といえば保育園・小学校のイメージが強いと思われますが、
今回の改正では、これまでの子どもを中心とした食育だけでなく、働く世代や高齢者を含む国民全体を対象とした食育の推進や、食料安全保障、生産現場への理解など、新たな視点が盛り込まれています。

食育は学校や家庭だけの取り組みではなく、地域や職場など社会全体で進めるものへと変化しつつあります。
栄養士・管理栄養士の仕事や新しい活躍の場としても期待されるでしょう。

本記事では、2026年の食育基本法改正のポイントをわかりやすく解説するとともに、栄養士・管理栄養士の仕事や今後期待される役割について紹介します。

👉 1分でわかる|この記事の結論
  • 2005年に制定された食育基本法が、2026年5月27日に改正された
  • 子どもだけでなく、働く世代や高齢者を含む「大人の食育」が重視される
  • 食料安全保障や国産農産物、輸入依存について理解することも食育の一つとなる
  • 農林漁業の体験や生産者との交流を通じ、食卓と生産現場の距離を縮めることが求められる
  • 食品の生産コストや価格形成を理解し、持続的な食料供給につながる商品を選ぶ視点が盛り込まれた
  • 栄養士・管理栄養士には、学校や企業、地域などで食と人をつなぐ役割が期待される
👉 目次(ジャンプ機能あり)

食育基本法とは?

食育基本法は、2005年(平成17年)6月に制定された、食育を総合的・計画的に推進するための法律です。

食育を「生きる上での基本」であり、「知育・徳育・体育の基礎となるもの」と位置づけ、子どもから高齢者まで、すべての国民が健全な食生活を実践できる力を身につけることを目的としています。

また、食育は家庭だけで行うものではなく、学校や保育所、職場、地域、生産者など、さまざまな立場の人が連携して取り組むべきものとされています。栄養バランスだけでなく、食文化の継承や食品の安全、農林水産業への理解など、食を取り巻く幅広い分野が食育の対象です。

そして今回2026年には約20年ぶりに法律が改正され、時代の変化に合わせた新たな考え方が盛り込まれました。

食育基本法の目的

改正のポイントの前に、食育基本法が制定された背景についてです。
制定時にも、
食生活の乱れや生活習慣病の増加
食の安全に関する問題
地域の食文化の衰退
などがありました。近年ではさらに、生活習慣病の増加や食生活の多様化、食品ロス、食料安全保障など、食を取り巻く課題は大きく変化しています。そのため食育は、「健康のための栄養の知識」だけではなく、食文化や地域とのつながり、生産者への理解、持続可能な食の実現まで含めた幅広い取り組みへと発展しています。

食生活をめぐる現状と課題

朝食欠食・孤食・偏食の定着化、家庭での食育の限界

・朝食欠食をする子供:6%
⇒文科省の目標は0%だが、悪化している
朝食欠食率推移

・朝または夕食を家族と食べている回数:平均週8回
⇒親や家族の生活スタイルや就労により、週3日は1人で食べている子どもがいる現状
夕食の共食状況

・主菜、主食、副菜を組み合わせた食事を毎日食べる若い世代:23%
⇒20代、30代のバランスの悪い食事の率が上がっている
・若い世代の朝食欠食率:20%
⇒5人に1人は毎日朝食欠食している状況。
朝食欠食率

今回の改正の背景にはこのような現状があります。
食習慣形成時期となる幼少期、学齢期だけではなく、大学そして職場を食育の場として追加し民間企業を巻き込んで社会全体に広めようとしているのです。

栄養士・管理栄養士は、学校では専門である栄養教諭を筆頭に、そして病院や施設、企業、行政、地域活動などさまざまな場面で食育を実践する専門職として、重要な役割を担っていくことでしょう。
データ:農水省:令和7年度食育白書 全文
データ:農水省:食育に関する意識調査報告書(令和8年3月)

食育推進基本計画との違い

食育基本法とあわせてよく耳にするのが、「食育推進基本計画」です。

食育基本法が食育の理念や基本方針を定めた”法律”であるのに対し、食育推進基本計画は、その理念を実現するために国が策定する”行動計画”です。さらに、都道府県や市町村では、国の基本計画をもとに地域の実情に合わせた食育推進計画を策定し、それぞれの地域で食育を推進しています。
2026年6月には、改正後の食育基本法を踏まえた第5次食育推進基本計画が決定されました。

今回の計画では、特に次の3つが重点事項として掲げられています。

  • 学校等での食や農に関する学びの充実
  • 健全な食生活の実現に向けた「大人の食育」の推進
  • 国民の食卓と生産現場の距離を縮める取り組みの拡大

これらの内容は、今回の食育基本法改正の考え方を具体的な施策として示したものであり、今後の食育の方向性を理解するうえで重要なポイントです。

食育基本法はなぜ改正されたのか

改めて、食育基本法が制定された2005年から約20年が経ち、私たちを取り巻く「食」の環境は大きく変化しました

近年では、少子高齢化やライフスタイルの多様化に加え、世界的な食料価格の高騰や気候変動などの影響により、食料安全保障への関心が高まっています。

こうした背景から、2024年には「食料・農業・農村基本法」が改正され、食料安全保障の確保が基本理念の柱として位置付けられました。また、食料の持続的な供給を支えるため、消費者も食や農への理解を深め、持続可能な消費行動をとることが期待されています。

参考:農水省:食料・農業・農村基本法

そして、食卓と生産現場の距離が広がり、食べ物がどのように作られているのかを知る機会は減少しているのも重点課題とされています。

こうした社会情勢を受け、食育のあり方についても見直しが行われ、2026年には食育基本法が約20年ぶりに改正されました。
先ほど説明した背景の通り大人の食育も盛り込まれ、子どもだけでなく、働く世代や高齢者を含めたすべての世代を対象とした食育へと視点が広げられています。

食育基本法改正のポイント

①大人の食育が新たな重点課題に

これまでの食育は、学校や家庭を中心とした子どもへの取り組みが注目されることが多くありました。しかし、今回の法改正を踏まえて策定された第5次食育推進基本計画では、働く世代の「大人の食育」の推進が重点事項として掲げられています。

栄養士・管理栄養士の皆さんならお分かりですが、忙しさや孤食から食事を簡単に済ませたり、外食や中食に偏ったりすることで、生活習慣病のリスクが高まることは少なくありません。
また、高齢者では低栄養やフレイル予防の観点からも、適切な食事を継続することが重要です。

こうした課題に対応するため、「大学」「職場」での健康づくりや、民間企業そして地域での栄養教育、特定保健指導など、大人を対象とした食育の取り組みが今後さらに重要になると考えられています。

目標としては
朝食の欠食率を25%以下
栄養バランスに配慮した食生活の実践(主菜・主食・副菜の組み合わせた食事を1日2回以上食べている割合を40%以上)
環境に配慮した農林水産物・食品を選ぶ国民の割合
等があげられています。

② 食料安全保障への理解を深める

今回の改正では、「食料安全保障」への理解を深めることも重要な柱として位置付けられました。

食料安全保障とは、国民が将来にわたって必要な食料を安定的に確保できる状態を維持することです。近年は、世界的な気候変動や紛争、円安などの影響により、食料価格の高騰や供給不足がニュースで取り上げられる機会も増えています。

日本は多くの食品や飼料を海外からの輸入に依存しており、世界情勢の変化は私たちの食卓にも大きな影響を与えます。また、地震や豪雨などの自然災害が発生した際にも、安定した食料供給の重要性が改めて認識されています。

そのため、今回の改正では食料安全保障について理解を深めるとともに、国産農産物への関心を高め、日頃から食について考える力を育むことも食育の役割として示されました。

具体的な目標値としては
食品ロス削減のための行動をする消費者の割合80%以上
食品の安全について基礎的な知識を持ち、自ら判断ができる国民の割合75%以上
などになります。

③ 農林漁業への理解・体験を重視

食育基本法改正では、食べ物を「食べる」だけではなく、「どのように作られているのか」を知ることも重要な視点として盛り込まれました。

近年は、生産者と消費者が直接関わる機会が減り、子どもだけでなく大人でも農林漁業に触れる機会が少なくなっています。

そのため、学校での農業体験や収穫体験、地場産物を活用した学校給食、地域の生産者との交流などを通じて、食と農林漁業のつながりを学ぶ取り組みが期待されています

また、地産地消を進めることは、地域の農林漁業を支え、国産農林水産物への理解や選択を促すことにもつながります。

栄養士・管理栄養士にとっても、献立作成や食育活動を通じて地域の食材や生産者を紹介する機会は多く、食と生産現場をつなぐ役割が今後さらに重要になるでしょう。
子どもには学校給食を通じた地産地消、地場産物、国産食材に触れることや
大人にも産地や生産者を意識して食品を選ぶ目標値などが設定されています。

④ 食品の価格や生産現場への理解を深める

今回の改正で新たに強調された考え方の一つが、食品の価格や生産現場への理解です。

私たちは普段、できるだけ安く食品を購入したいと考えがちですが、その一方で、生産者は資材価格や燃料費の高騰、人手不足などさまざまな課題に直面しています。

そのため、「安ければよい」という考え方だけではなく、食品の価格がどのような生産コストによって成り立っているのかを理解し、地場産品や国産品など、食料の持続的な供給につながる商品を選ぶという視点が盛り込まれました。

食育は栄養や健康について学ぶだけでなく、食を支える人々への理解や感謝を育むことも大切な目的です。日々の買い物や食事を通じて、生産現場や食品の価値について考えることも、これからの食育の一つといえるでしょう。

栄養士・管理栄養士も、献立や食育活動を通して「栄養」を伝えるだけではなく、食材の背景や生産者への理解を伝える役割が、これまで以上に期待されるでしょう。

食育基本法改正で栄養士・管理栄養士に期待される役割

2026年の改正では、これまで子どもを中心に注目されることの多かった食育について、働く世代や高齢者を含む、あらゆる世代への取り組みを一層進める方針が明確になりました。それに伴い、栄養士・管理栄養士に期待される役割も、「栄養を伝える」だけでなく、食や農への理解、生産者とのつながり、持続可能な食生活を支えることへと広がっています。

学校・保育園では「食べる」だけでなく「学ぶ」食育へ

学校や保育園は、食育を実践する代表的な場です。この時期の食事がそのまま生涯の基礎になる事が多いためです。

今回の改正では、食や農に関する学びの充実が重点事項として掲げられました。そのため、地場産物を活用した給食や、生産者との交流、農業体験、郷土料理を学ぶ機会など、「食べる」だけではない体験型の食育がこれまで以上に重要になると考えられます。(農林漁業体験の努力義務が設定されました)
また、学校給食においては地場産物・国産食材の使用割合を金額ベースで90%以上という目標値も設定され、より国産のものを身近に感じるようになります。

栄養士・管理栄養士には、献立作成だけではなく、子どもたちが食材や生産者への理解を深められるような食育活動の企画・実施も期待されるでしょう。

大学の学生食堂では「大人の食育」の実践の場に

今回の改正で新たに重点項目となった「大人の食育」は、大学生にも深く関係しています。

一人暮らしやアルバイトなどで生活リズムが乱れやすい大学生は、朝食の欠食や栄養バランスの偏りが起こりやすい世代です。

学生食堂は、健康的な食事を提供するだけでなく、適切な食事の選び方や栄養表示の活用方法を伝える「学びの場」としての役割も期待されています。

管理栄養士が考案したヘルシーメニューや、食育イベント、健康フェアなどを通じて、社会へ出る前の食習慣づくりを支援する取り組みが、今後さらに重要になるでしょう。

社員食堂や健康経営では食育の役割がさらに拡大

働く世代を対象とした「大人の食育」の推進は、企業においても重要なテーマです。

主に社員食堂では、健康的な献立の提供だけでなく、野菜摂取量の見える化や減塩メニュー、地元食材を活用したフェアなど、日常の食事を通じた食育を実践できます。社員食堂がない職場ではレシピなどの情報提供も推奨されています。

また、健康経営に取り組む企業では、管理栄養士によるセミナーや栄養相談、特定保健指導など、従業員の健康づくりを支援する機会も増えています。また、健康経営とは別に「食育実践優良法人」という制度ができ、2026年に初めて334法人が認定されました。
今回の改正をきっかけに、企業における食育は福利厚生の一環ではなく、従業員の健康維持や生産性向上につながる取り組みとしてよりポピュラーになり、さらに注目されることが期待されています。
参考:農水省:食育実践優良法人顕彰制度について

セミナーや地域活動でも活躍の場が広がる

食育基本法では、家庭や学校だけでなく、地域全体で食育を推進することが重要とされています。そのため、自治体や企業、地域団体などが開催する食育イベントや健康セミナーの役割も、今後ますます大きくなるでしょう。

例えば、生活習慣病予防やフレイル予防をテーマとした栄養講座、親子料理教室、防災食セミナー、地元食材を活用した料理教室などは、子どもから高齢者まで幅広い世代が食について学ぶ機会となります。

また、健康経営に取り組む企業では、社員向けの栄養セミナーや食育イベントを実施するケースも増えており、働く世代を対象とした「大人の食育」の実践の場として期待されています。

栄養士・管理栄養士は、専門的な知識をわかりやすく伝えるだけでなく、食と健康、生産者や地域とのつながりを伝える”食育の担い手”として、活躍の場がさらに広がっていくでしょう。

まとめ

2026年の食育基本法改正では、子どもだけでなく、働く世代や高齢者を含むあらゆる世代への食育を一層推進する方針が明確になりました。

また、健康づくりだけではなく、食料安全保障や農林漁業への理解、食品の生産コストや価格形成への理解を深め、持続的な食料供給につながる商品を選ぶこと「食」を取り巻く環境全体を学ぶことが、これからの食育に求められています。

栄養士・管理栄養士に期待される役割も、栄養指導や献立作成だけではありません。学校や保育園、大学の学生食堂、社員食堂、健康経営、地域イベントや食育セミナーなど、さまざまな場面で「食べること」の大切さを伝える専門職として、活躍の場はさらに広がっていくでしょう。

食育は、一人ひとりの健康だけでなく、日本の食文化や地域、生産者、そして未来の食を支える取り組みでもあります。これからの栄養士・管理栄養士には、「食べる」を支える専門職として、これまで以上に幅広い活躍が期待されています。

食育に携われる仕事とは?

食育基本法の改正により、栄養士・管理栄養士には、これまで以上に幅広い分野での活躍が期待されています。

学校や保育園で子どもたちの食育を支える仕事はもちろん、大学の学生食堂で若い世代の健康づくりをサポートする仕事、社員食堂や健康経営に取り組む企業で働く世代の食生活を支える仕事など、食育に携われる職場は、学校や保育園にとどまらず、大学や企業、地域活動など幅広い分野にあります。

また、地域イベントや食育セミナー、健康講座などを通じて、地域住民の健康づくりに貢献する機会も増えています。「栄養指導」だけでなく、「食を通じて人や地域を支えたい」と考える方にとって、活躍できるフィールドは今後さらに広がっていくでしょう。

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