栄養指導に必要な薬のはなし講座~疾病の成立ち~

こんにちは。
DietitianJob運営会社 東洋システムサイエンス栄養士の山田です。

今回は、2024年8月4日(日)に実施した「栄養指導に必要な薬のはなし講座~疾病の成立ち~」の様子をご紹介致します。
本講座は、病院・調剤薬局、介護施設、専門校の講師と幅広くご活躍されている薬剤師の佐伯有美先生を講師としてお招きし、zoomを使ってオンライン講座を実施いたしました。
栄養指導の現場で、患者様の服用されている薬の名称を聞いたり見たりする際、どんな薬だろう?と思われる事あると思います。
そんな方に向けて、薬の姿を学べる講座となっております。

当日のラインナップはこちら
1.糖尿病と治療薬
糖尿病の仕組みと、寿命を縮めてしまう合併症などを学び「糖尿病を悪化させないように働きかける薬」を解説します。
2.高血圧症と治療薬
血圧が上がる仕組みや、血圧が高いことで体にかかる負担を考えながら「血圧に働きかける薬」の特徴を解説します。
3.脂質異常症と治療薬
脂質異常症を放置することのリスクや、かかりやすい疾患を知り「脂質へ働きかける薬」の特徴を解説します。

※上記の治療薬の解説の中で、薬の正しい使い方、飲み忘れに対する対応や、飲食物との飲み合わせなども織り交ぜてお話していきます。

糖尿病と治療薬

糖質や脂質とインスリンがどう関わるかについて図解を使った分かりやすい話から始まり、インスリンの働きがより理解できたところで合併症の話にうつります。
ご存知の方も多い「糖尿病の三大合併症」やそのほかの合併症についての説明を腎臓のしくみの話を挟みながら解説いただき糖尿病の怖さを感じる話へ。
Ⅰ型、Ⅱ型の糖尿病の違い、血糖値とインスリンの関係を知って、治療薬を学んでいきます。
病気自体を学ぶところから始めて下さったので、各薬がどのように体の中で働くか興味深く聞く事が出来ました。
たくさんある治療薬説明の一部をご紹介します。
なお、講義内ではそれぞれの一般名と商品名をお示しいただいています。

例)αグルコシターゼ阻害薬
αグルコシターゼとは、マルターゼ・スクラーゼ・グルコアミラーゼ・イソマルターゼ、といった栄養士にも馴染みある糖の消化酵素のひとつ。
この働きが阻害されると摂取した炭水化物内の二糖類が単糖類になるのが遅れ、糖の吸収がゆっくりになることで食後の急激な血糖値上昇を抑えることができる。
その結果、消化されない糖質が大腸に流れ腹部に膨満感が出る場合がある副作用や必ず食直前に服用する注意点もある。
などの作用機序や副作用・注意点を各治療薬で伺うことが出来ました。

血糖降下薬の働きはこのように糖の調整するものだけかと思いきや、
インスリンの調整をするもの(例:SU剤、DPP-4疎外薬他)、どちらにも働きかけるもの(例:チアゾリジン他)もあり、
それらの薬を名称から解説くださり、糖をどのように阻害するのかを伺えました。

聞きなれない治療薬ではあり頭がいっぱいになりながらも、薬物動態(体の中での動き方)を口・胃・小腸・大腸→便、又は肝臓→血中→全身→腎臓→尿と図解で説明くださり面白かったです。

ちょこっとガイドとして、
糖尿病の治療薬としてインスリン注射が有名ですが、最新の使い捨てではない現物もみせてくださり、皮下注射の深さの説明には講義中にも関わらず思わず「へ~!」と言いたくなりました。

高血圧症と治療薬

メタボリックシンドロームと心筋梗塞・脳卒中との関係性から始まります。
血圧が上がる3つの仕組み(①血管が狭くなる ②体内水分量の増加 ➂心拍数の上昇)から治療薬の説明へ。
糖尿病薬と同じく、治療薬説明の一部をご紹介します。

例)カルシウム拮抗薬
カルシウムイオンは、血液内ではカリウムイオンやナトリウムイオンと一緒に細胞内外を移動しており、血管の収縮にはカルシウムイオンが重要な働きを担う。
カルシウムイオンが細胞内に入ると血管が収縮し、血圧が上がる。この動きを阻害(=拮抗)することで血管平滑筋を直接広げ、血圧が下がる。
血管が広がるので頭痛の副作用が出ることがあるが、重い副作用は少ないので、高齢者にも安心して使用でると伺いました。
注意点は、グレープフルーツを摂らないようにすること。薬の効果が強く出すぎることがあるそうです。

残り2つの仕組みである
②体内水分量の増加に対応する薬(利尿薬他)や③心拍数の上昇に対応する薬(交感神経抑制剤他)も、これら3つの仕組みすべてを引き起こす物質を阻害するという機序の薬もあります。
やはり体の仕組みの話もしていただくと、解かりやすく憶えやすいと思いました。

ちょこっとガイドとして、
薬の溶け方を実際にみせていただきました。
割って(砕いて)大丈夫なものと悪いものがあり、見極め方も伺えました。

脂質異常症と治療薬

脂質異常症の原因は、栄養士としては知っていなければいけない内容が盛りだくさんでした。
家族性高コレステロール血症は、高LDLコレステロール血症を起こす遺伝疾患で、ホモ接合型が100万人に1人・ヘテロ接合型が500人に1人程度と言われています。
通常の脂質異常症の治療薬が反応しにくく、冠動脈疾患発症リスクが高くなります。
疾患の話は興味深いです。
この単元でも同じく、治療薬説明の一部をご紹介します。

例)スタチン系(主にLDLコレステロールを改善する薬)
肝臓でコレステロールを作る酵素の働きを阻害してコレステロールの合成を抑える働きと、肝臓へLDLを取り込み血液中のLDLを減少させる働きがある。
肝臓内のコレステロールは常に一定量に保たれているため、不足すると血液中のコレステロールを肝臓に取り込むので、血中コレステロールを低下させることができる。
服用は夕食後が効果的。怖いのが副作用で、横紋筋融解症に注意が必要だそうです。

他に、TGに作用する薬(フィブラート系他)や、難治性脂質異常症の治療薬(PCSK9阻害薬他)もご紹介いただきました。

ちょこっとガイドとして
薬のカプセルには軟カプセルがあるのをご存知ですか?
脂質異常症の治療薬にはこの軟カプセルを使用した多価不飽和脂肪酸のお薬もあります。

各項目の最後には復習を兼ねたまとめもあり、最新情報の薬を分かりやすい表にしていただいた資料はきっと財産になりますね。

参加者の声(一部抜粋。記述は回答のまま)

〇薬だけでなく基礎の学習ができ良かったです。
〇外来栄養指導や、入院患者様の栄養管理にて薬は切り離せないものであり、今回の講義で薬に対する知識を奥深く知ることができました。 糖尿病、高血圧、脂質異常症を罹患している患者様は多くいるため、薬の作用や使用方法などこれからの栄養管理に積極的に活かしていきたいです。 病院には薬剤師も存在しますが、管理栄養士の視線から食事と薬の面で視野を持って栄養管理していけるように知識を深めていきたいです。
〇名前だけは知っている程度の薬の理解が深まりました。 疾患の概要をおさらいから入っていただいたのも有難かったです。 剤形見本も見ることができ勉強になり大満足です。 ありがとうございました。

Dietitian Jobでは今後も栄養士・管理栄養士の皆様の日々の業務に少しでもお役に立てるセミナーを開催していきます。ぜひご参加くださいね!