栄養士が知っておきたい食物アレルギー~おうち焼き肉~

<最終更新2025.9.10>
こんにちは、管理栄養士の廣江です。
栄養士として現場で働いていると、切っても切れない関係の食物アレルギー。
アレルギーによるトラブルは知っていれば防げることがたくさんあります。
普段から保育園や学校を始めとした子供向けの大量調理に関わっている方はご存じのことが多いかもしれませんが、それ以外の方も是非栄養士として知っておきたい食物アレルギーの情報をお伝えします。今回はご自宅で起きた事例と一緒にご紹介します。

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目次

栄養士のアレルギー対応

食に携わる栄養士として、アレルギー対応は非常に責任の伴う仕事です。適切な対応、適切で安全な献立や食事を作るため、知識を深める必要があります。
そして、安全な食事環境を整えるためには一人ではなく調理員や職場により保育士、介護士、保護者とチームとなって対策を講じることは、対象者の健康を守るうえで欠かせません。今回は実例も紹介しながら、栄養士のアレルギー対応についてお話します。

食物アレルギーとは

改めて、食物アレルギーとは、本来無害である食物中のタンパク質に対して免疫系が過剰に反応し、皮膚症状や消化器症状、呼吸器症状などを引き起こす状態を指します。日本では小児の約5〜10%、成人の約2%前後に食物アレルギーがみられると報告されています(厚生労働省2023、日本小児アレルギー学会2022より)
免疫の過剰反応により、身体はさまざまな症状を引き起こします。例えば、皮膚のかゆみや発疹、消化不良、重篤な場合は呼吸困難等のアナフィラキシーショックなどが挙げられます。食物アレルギーは、個々の体質や遺伝的要因によって異なるため、同じ原因食品でも人によって反応や度合いは異なります。
また、主な食物アレルギーの原因食品としては、卵、牛乳、小麦、ナッツ類などがあり、特に子供に多く見られます。これらのアレルギーは、成長とともに改善される場合もありますが、大人になっても持続、または大人になって初めて発症することがあるため、注意が必要です。
子どもに多いイメージは皆さんあると思いますが、大人に多いアレルギー(甲殻類)や、高齢になっても継続している方ももちろんいます。特別養護老人ホームで管理栄養士を勤めていた際は、青魚のアレルギー対応がとても多かったです。昔は鮮度が保てずにサバ等のヒスタミンアレルギーが多かったのかもしれません。ご本人は一度起きたアレルギーがトラウマとなっており、青魚はそれ以降避けているというお話でした。

食物アレルギーの種類

・即時型アレルギー(IgE依存型)
摂取後、数分から2時間以内に症状が出現するタイプです。蕁麻疹、呼吸困難、アナフィラキシーなど重篤な症状を起こすこともあります。卵、牛乳、小麦、落花生、甲殻類(エビ・カニ)が代表的です。

・遅発型アレルギー(非IgE依存型)
症状の出現が数時間から数日後と遅れるタイプで、乳児の食物アレルギーに多くみられます。代表例として「食物蛋白誘発胃腸症候群(FPIES)」があります。下痢や嘔吐、体重増加不良など消化器症状が中心です。

・口腔アレルギー症候群(OAS)
果物や野菜を摂取した際に、口腔や咽頭にかゆみや腫れを感じるタイプです。花粉症に関連して発症することが多く、シラカバ花粉とリンゴ、スギ花粉とトマトなど「交差反応」が知られています。

食物アレルギーの原因食品

日本人における食物アレルギーの原因食品は鶏卵、牛乳、小麦が多く、長年、食物アレルギー原因食品の上位となっています。
ですが、近年はクルミやカシューナッツなどの木の実類のアレルギーも増えてきています。また、18歳以上では鶏卵は減り、小麦、エビ、カニが上位となります。

その他にも落花生(ピーナッツ)、キウイフルーツやバナナなどのフルーツ、イクラやたらこなどの魚卵、ソバ、大豆、魚類等多岐に渡ります。

アレルギーとわかっているなら、引き起こす可能性のある食材を徹底的に排除し、代替食品を活用すれば問題がない…そう思っていませんか?
今回は実際にアナフィラキシーショックが起きた実例をご紹介します。

おうち焼き肉で食物アレルギーが起こった実例


こんにちは。外部執筆スタッフ 管理栄養士のHOです。

このコロナ禍では外食も控えて『おうち焼き肉』をする方も多いと思います。

その『おうち焼き肉』で実際にあった食物アレルギーの中でも重症の症状、アナフィラキシーショックが起きた事例を紹介します。

外食で牛の焼き肉やステーキを食べて、アレルギー症状がでたことがないAさんが、いつものように家で牛肉を食べて、全身が真っ赤になり、呼吸が苦しくなるアナフィラキシーショックを起こしました。

さてここで、皆さん、原因は何だったと予測しますか?

1.トングや皿、箸、コップ、まな板、包丁、焼き肉用鉄板にアレルギーの原因になるものが付いていた

2.牛肉以外の料理や焼き肉のたれにアレルギーの原因になるものが混入していた

3.牛肉に入っていた

 

 

 

外食では平気だったのに、自宅で発症した理由

答えは………!

1.一番気をつける点ですね。

2.もちろんこれも重要なチェックポイントです。

しかし、3.はどうでしょう?

牛タンや牛カルビを購入するとき、ホンモノの牛肉だということを確認していますか?

最近は、牛カルビや、牛タン、サイコロステーキなど一般に市販されているものの中に、『成型肉』と呼ばれ、細切れの肉を結着剤や添加物を使って固めた肉が販売されています。

成型肉に潜むアレルゲンのリスクとは?

結着剤というのは、細かくした肉を水分まで中に閉じ込めて固めて作るときに使うものです。

ハムやソーセージには結着剤はよく使われますが、最近は安い肉を美味しくして売る手法のひとつとして、使われています。

混ぜるときに、卵、カゼイン(乳たんぱく)、大豆たんぱくがよく利用されるので、それらにアレルギーがある場合、見逃されやすいので注意が必要です。

食品表示制度の理解とアレルギー対応

特定原材料7品目の表示義務について

食品表示法では、食物アレルギーの症状の発症数が多く、重篤な症状になるものを【特定原材料として『卵、乳、小麦、そば、えび、かに、落花生(ピーナッツ)』の7つの食品表示を義務付けています。

この7つは、含まれていることを表示していない場合、食品表示基準義務違反となり、罰則があります。

ただし、表示されるのは、加工された食品の中に残存するアレルギー反応をおこす原因になる物質(アレルゲン)が1gあたり数μg以上あるものなので、それ以下であれば表示されません。

ですから、同じものをたくさん食べた場合は濃度が濃くなるので、注意が必要な人もまれにいます。

表示推奨の21品目にも注意が必要な理由

その他にこの7つの食品ほどではないけれど食物アレルギー症状の報告が多い食品を【特定原材料に準ずるものとし表示が推奨されているものが 『大豆、アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン』の21品目あります。

この21品目の表示は推奨なので『大豆』の表示がされていなくても罰則はないため、成型肉に大豆たんぱくが入っていたら、大豆アレルギーの人は症状がでてしまう恐れがあります。

ただし、これらの表示は店頭で量り売りされる惣菜や弁当などはしなくても販売できることになっているため、食物アレルギーがある場合の店頭での購入は厳しいという現実問題があります。

栄養士として現場で活かしたい対応策

肉が固めてあるとなると、ステーキや牛タンのような厚みのある肉を想像されると思いますが、しゃぶしゃぶ用の薄切り肉にも使われているので、特に安くて柔らかい肉(食べ放題、バイキングなど)は慎重になる必要があります。

この成型加工品は安い味付き肉としても売られていることも多く、必ず「中心部分まで完全に加熱してお召し上がりください」と書かれています。

これは、混ぜる際に菌が混入しやすいため、食中毒の予防のための注意書きです。

これまでにもO-157などの食中毒を起こした店を調査したときに原因は、成型肉の加熱が不十分であったということが多く報告されています。

外食での焼き肉やステーキが好みの焼き加減で食べても食中毒の問題がないのは、加工品でなくホンモノの牛肉そのものだからです。

食物アレルギーは、時には命にかかわることもあります。

見た目だけで発生を予防することはできませんが、ホンモノそっくりなのか、ホンモノなのかを確認することで防げることもあります。

素材だと思っていても、技術向上がゆえに成型加工品でもわかりにくくなっています。

「高級」「焼いても柔らかい」「◎◎産」「●●牛」のシールや値段に惑わされず、まずは容器の裏表や表示をしっかり確認して、少しでもアレルギーによるトラブルを防ぎましょう。

参考:消費者庁 食物アレルギーに関する情報

まとめ

家庭の焼き肉でも、アレルギー対策は怠れません。

おうち焼き肉で起こりがちな食物アレルギーは、成型肉に含まれる卵・乳たんぱく・大豆たんぱくなどの見えにくいアレルゲンが原因であることも少なくありません。食品表示制度の「特定原材料7品目」だけでなく、表示推奨の21品目にも注意を払うことが重要です。

栄養士・管理栄養士としては、こうした「見えないリスク」を把握し、食材選びや調理法の指導に活かすことが求められます。「安全な食環境を支える知識」は、保育園、病院、高齢者施設などの現場で即戦力になるスキルです。

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