栄養士が知っておきたい食物アレルギー~第6回目 アレルギー表示編~

こんにちは。外部執筆スタッフ 管理栄養士のHOです。

食物アレルギーのリスクを知っていることによって防げることがたくさんあります。
普段から給食に関わっている方はご存じかもしれませんが、仕事で給食に関わっていない方に、是非知ってほしい食物アレルギーの情報をお伝えします。

第6回目は、アレルギー表示です。

食品表示法に基づいた食物アレルギー表示については、消費者庁が食品表示基準で症例数が多く重篤度から表示の必要性の高いもの(特定原材料)を義務表示、症例数や重篤な症状を示す例が特定原材料ほど症例数が多くないが注意が必要なもの(特定原材料に準ずるもの)を推奨表示(任意)としています。

今年3月、これまで推奨表示であったくるみが食品表示が義務付けられた品目(特定原材料)に追加されました。

表示義務8品目:えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)、くるみ

表示推奨20品目:あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、アーモンド、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

これらは、約3年ごとの全国実態調査の結果を踏まえて検討されていくものですが、この15年間に木の実のアレルギーは約7倍に増加しています。

くるみ、カシューナッツ、アーモンドといった表示対象品目に限らず木の実は注意しておきたい食材です。

消費者庁の2020年の調査報告書では食物アレルギーの原因の1位が卵、2位が乳、3位が木の実、4位小麦5位が落花生(ピーナッツ)でした。

食事を提供する私達栄養士は、表示ミス一つを見逃すと深刻な事態になる、命に直結するという緊張感を持つことが大切です。そのためには正しい知識で無駄に除去したりすることもないようにしたいものです。

食物アレルギー原因の上位に入る乳と小麦はわかりにくい、まぎらわしいものがあります。

【乳?】

特に気を付けたい3パターンを例示します。

「乳」の文字が入っていても乳アレルギーの原因にならないもの:乳化剤、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、乳酸菌など。但し、「乳酸菌飲料」には牛乳が含まれますので注意が必要です。

「乳」に由来するが食べられる可能性のあるもの:牛乳に微量に含まれる糖類の「乳糖」ですが、少量であれば食べられる場合も多いので確認が必要です。

「乳」の文字がなくても乳アレルギーの原因になるもの:ホエイ、カゼインなど。バターも牛乳の脂肪分で作られているので「乳」の字がなくてもアレルギーの原因になります。
(なお、カカオバターやピ-ナッツバターは豆の脂肪分で作られている全く別の食品で乳アレルギーとは関係しません。)

【小麦?】

小麦以外の麦類(大麦、ライ麦、ハト麦、えん麦など)は表示対象外です。

麦茶は大麦が材料のため飲めるケースがほとんどですが、稀に重症な小麦アレルギーの場合は医師より麦類除去の指示を受けていることがあります。

大麦は、平たくつぶした押し麦、丸さを生かした丸麦、米粒のようにした米粒麦など、同じ大麦でもいろいろと味わえる商品が販売されています。
なかでも大麦を半分にカットして白い米粒のように加工した米粒麦はお米に混ぜて炊くと押し麦や丸麦のように目立つことなく白いご飯に炊きあがります。

炊きあがったご飯は、米アレルギー以外は油断しがちなので、特に重症の小麦アレルギーの場合は、慎重に確認が必要です。

<アレルギーの表示対象の範囲>

1. 店頭に並ぶ前にあらかじめ袋、箱、ビン、缶など容器包装されたアレルゲンを含む加工食品
➡店頭で量り売りされる惣菜やパンなどは含まれていても表示対象外

2. アレルゲンを含む添加物
カゼインNa(乳由来)、グルテン(小麦由来)、増粘剤(キチン:えび・かに由来)など

アルコールは、表示対象外です。アルコールそのものにアレルギーのある方もいらっしゃいますが、果汁を使ったお酒も増えているので、提供する場合には注意が必要です。

油断しがちなことは、期間限定やリニューアル商品などこれまでと一部変更になるときです。いつもと同じと思っても、表示対象の加工食品は使用、提供の都度、しっかり確認して事故を予防したいものです。

参考:消費者庁ホームページ https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/