栄養士が知っておきたい食物アレルギー~第5回目 洗浄編~

こんにちは。外部執筆スタッフ 管理栄養士のHOです。

食物アレルギーのリスクを知っていることによって防げることがたくさんあります。
普段から給食に関わっている方はご存じかもしれませんが、仕事で給食に関わっていない方に、是非知ってほしい食物アレルギーの情報をお伝えします。

第5回目は、洗浄と食物アレルギーです。

食物アレルギーの対応はどうしても食品の原材料への注意が優先されがちです。

必ず洗剤とお湯で洗浄しているから大丈夫だと思われがちですが、
一見衛生的なようでも、アレルギー物質を取り除く洗浄ができていないことが原因で食物アレルギーの症状は起こる場合があります。

今回はAさんに起きた2つの体験談をもとに、注意点についてお伝えします。
Aさんは、卵や乳製品を食べると蕁麻疹や嘔吐、呼吸が苦しくなるアナフィラキシーショックの経験がある幼児です。

① 食べたものが原因ではなくカップが原因で

イベントで、陶器の器で配られた豚汁(卵、乳不使用)を飲んで、しばらくすると顔全体に蕁麻疹がでてしまいました。
近くの病院に搬送されて点滴等の処置も早かったので、大事に至りませんでした。

その後、原因は、豚汁が入っていた陶器のカップは、前回ごはんを入れた茶碗蒸しに使われていたことが判明。
温かい豚汁を入れたことで洗浄不十分で残留したものが溶けだしたものと思われました。

大人には使い捨ての容器が使われていましたが、子ども用には大きかったため、小さめの持ち手のある陶器のスープカップが使われたのです。
使いやすさ重視でチエックがもれていました。

② ランチョンマットを口にくわえてしまって

自宅で卵や乳製品が入っていない昼食を食べたのに、しばらくすると口の周りが赤く腫れてかゆがりはじめました。
軽かったので手持ちの薬を使い症状は治まりました。

原因は食器の下に敷いてあったランチョンマットの角を口にくわえてしまったためだと思われます。
ランチョンマットは家族共有で使い、洗濯しています。
しかし前日に弟が牛乳をこぼしたため、お母さんは、台所にあった中性洗剤をつけてお湯で洗い台所に干していたものをAさんに使ってしまったのです。

繊維の奥にまで浸透した牛乳が洗浄不足で残ったままだったと思われます。
普段、気を付けているお母さんでも、まさか口に入れるとは思わず、ちょっと目を離した間におきた思いがけないことでした。
大人にとっては口にしないものでも、幼い子どもは予想外の行動をとるので環境整備と見守りは大切です。

たんぱく質は30~40度のお湯で分解しますが、こびりついて時間が経った汚れは、浸漬時間が短いと汚れが落ちにくく、残りやすくなってしまいます。
また、ご飯粒などでんぷんが高温で糊状になり、冷めて低温になると水に溶けなくなり老化して固まると尚更落ちにくくなります。

たんぱく質の汚れも、でんぷんの汚れも洗浄の際は、シンクに20分以上浸漬してから洗浄するのが理想です。
もちろん、水より30~40度のお湯が最適です。大規模な施設では、浸漬用のシンクや温湯の自動洗浄機があると思いますが、自動洗浄だけでは残る場合もあります。

食器だけに限らず、箸やスプーン、鍋やザル、まな板などの調理用具や食事の際に利用する小物も30~40度のぬるま湯に20分の浸漬し、
スポンジで予洗いをしてから洗浄機に入れると除去力が高まり安心です。

洗剤は、アルカリ洗剤や重曹、セスキ炭酸ソーダなどを使用し、スポンジの共用は避けたいものです。

家庭と同レベルの小規模なところや、行事、災害時など、臨時設備などを使用する場合は、別に洗浄することが難しくなります。
また、短時間に片付けを行う必要があると浸漬が難しい場面も発生しますが、洗浄、乾燥、保管まで気を抜かない丁寧な作業と確認で安全を心がけたいものです。