高血圧でも味噌汁は飲んで大丈夫?!

こんにちは。外部執筆スタッフの赤松るみです。

私は特定保健指導で野菜の摂取を勧める時、具だくさんのお味噌汁がいいとよく伝えます。

味噌汁はひとつのお椀の中に野菜・海藻・きのこ類など栄養満点の具材をギュっと詰め込んで、発酵食品の味噌と一緒に食べられる、非常に健康的な食べ物だからです。

ただ、高血圧の人からは、塩分を気にして食べるのを我慢している、という声をよくお聞きます。

本当に味噌汁は高血圧に悪影響があるのでしょうか?
実は、味噌汁を飲んでも「血圧は上がりにくい」、むしろ「血圧上昇を抑制する」という研究結果が数多く報告されています。

もし味噌が血圧を上げにくいなら味噌汁をお勧めしやすくなりますよね。

そこでこの記事では、味噌と血圧についての研究結果をいくつかご紹介いたします。

研究1:同じ塩分を食塩水と味噌水から摂った時の比較実験


こちらは共立女子大学が2016年に発表した研究結果です※1。
血圧が自然に上がるラットに同じ塩分量を含む食塩水と味噌水を与えて血圧の上昇具合を測定したというものです。

どちらも上昇はしていますが味噌水を飲んだラットの血圧が低く抑えられているのがおわかりになるでしょうか。

この実験からは、同じ塩分をとったとしても味噌でとった場合は血圧上昇が抑えられるということが示唆されています。

研究2:1日2杯の味噌汁を3カ月飲んだ時の血圧を調べた実験


こちらも共立女子大学が2016年に発表した研究結果です※2。
同様の実験をヒトを対象に行いました。

3か月にわたって1食あたり16gのだし入り味噌汁を1日あたり2杯飲んでもらい血圧の変化を測定したというものです。

その結果、味噌汁を飲む前と比べて3ヶ月後の血圧は上昇していませんでした。

この結果からは1日2杯の味噌汁を飲んでも血圧には影響しにくいということが言えます。

研究3:味噌汁の摂取頻度と高血圧の発症頻度を調べた研究


次に、国立がん研究センターによる味噌汁と高血圧などの生活習慣病の関連に関する研究をご紹介します※3。

健康診断を受診した40~64歳の2115人を、味噌汁の摂取頻度別に以下の4つのグループに分類しました。

1.味噌汁をほぼ毎日飲む人
2.週3~4回飲む人
3.週1~2回飲む人
4.ほとんど飲まない人

2年ごとに健診を実施し、約10年間、追跡調査を実施しました。

するとお味噌汁を1日1杯摂取している人は全く摂取していない人に比べて、高血圧だけではなく脂質異常症にもなりにくいということが分かったのです。

ただこの研究に関しては、1日2杯以上味噌汁を飲んでしまうと高血圧や脂質異常症になりやすいという結果が出ています。

味噌汁を2杯以上飲む方は、味噌以外のおかずからも塩分摂取量が多かったという可能性もありますが、飲めば飲むほどいいというわけではないのかもしれません。

味噌に塩分が含まれているのに血圧に影響しにくい理由


味噌には塩分が含まれているにもかかわらず、血圧に影響しにくいのはなぜなのでしょうか。

考えられることは、味噌に含まれている成分です。

味噌は大豆と麹と塩を発酵させて作ります。発酵の過程で様々な栄養素が生まれ、1500種類以上の成分を含む栄養豊富な食品に変化します。

その中には血圧上昇を抑制する成分や、腎臓からの塩分排出を促す働きがある成分があるという研究報告があるのです。

味噌の健康効果を考えると、高血圧を理由に避けるというのは少しもったいないように感じますね。

健康効果を高める味噌汁の作り方

ここからは味噌汁をより健康的に作るポイントをお伝えします。ポイントは3つです。

1.味噌は原材料が大豆、麦か米、塩とシンプルなものを選ぶ


材料がシンプルな味噌は、人工的な温度管理、余計な加工や添加物を加えず、麹の力だけでじっくり発酵しています。

そういった味噌は発酵による栄養成分もたくさん含まれていますし、何より風味が豊かでおいしいです。

なお、市販の味噌に多く使われている酒精は、味噌の発酵を止めて品質を一定に保つ働きをします。

品質を保つためには大切なものですが、発酵を止めるため、発酵効果が失活したり、風味が落ちることがあります。

発酵パワーをしっかり感じたい、風味も味わいたいという方は、酒精が使われていない味噌を選ぶといいでしょう。

2.味噌はパッケージに空気穴が開いているものを選ぶ


穴が開いている理由は、味噌の中でまだ酵母が生きて発酵を続けているからです。

先ほど発酵している大豆製品には高血圧を予防する効果があるのではないか、という研究を紹介しましたね。

酵母が生きている味噌は、発酵パワーをより感じられるということになります。

空気穴はパッケージの上の目につく場所にあることが多いです。ご自宅の味噌の容器に穴が開いているかどうか確認してみてください。

3.具材にカリウムや食物繊維が豊富な食材をたっぷり入れる


カリウムは、体の中のナトリウムを体の外に出す助けをしてくれます。

カリウムを多く含んでいるのは、いも類、特に里いも、ほうれん草やニラ、カボチャ、ナス、白菜、キャベツや切干大根などの野菜、海藻類などです。

食物繊維も体の中の余計な塩分を外に出す助けをしてくれます。

野菜類、海藻類、きのこ類、いも類などに多く含まれています。どちらも味噌汁に合う具材ばかりですね。

1杯あたり握りこぶし1個分以上を目安にたっぷり入れるのがおすすめです。

ただし腎臓機能が落ちている方はカリウムを排出する機能も落ちているので、高カリウム血症になるリスクがあります。

腎臓疾患である方には、お医者様からカリウムの摂取量について確認するようにお伝えしましょう。

まとめ

味噌で血圧が上がるのか上がらないのか、確実なことはまだわかりません。

また、何を摂ればどれだけ血圧が上がるのかは人によって異なります。

それでも、野菜、海藻、きのこ類やいも類をたっぷり入れた具だくさんの味噌汁は、血圧を気にされている方にもおすすめできる可能性が高いと感じます。

カリウムや食物繊維の摂取を促す時に、具だくさん味噌汁を提案の選択肢に加えてもいいのではないでしょうか。

味噌汁を食べる献立にすることで主食がご飯になる頻度が増え、脂質が多いパンや麺類を食べる頻度を減らすという変化も期待できます。

なお、すでに高血圧で受診をしていて、塩分摂取制限がある方には、お医者様に味噌汁を飲んでも大丈夫か確認するようにお伝えしてください。

また、高血圧と味噌汁について、さらに詳しく動画でもご紹介しているので、ぜひご覧ください

(リンク)https://www.youtube.com/watch?v=dM3ysGYRwsw
(リンクタイトル)高血圧でも味噌汁は飲んで大丈夫?!

出典:
※1 第39回 日本高血圧学会総会 (2016年10月1日)
内川実紗、日比野真帆、平林里美、山崎亜貴、山川称子、上原誉志夫、小池祥悟、北川学、山本哲郎
※2 「薬理と治療」2016年44巻11号 P.1601-1612
北川学、伊藤公美恵、山田南実、小池祥悟、山本哲郎、上原誉志夫
※3 都市型コホート研究「吹田研究」
国立がん研究センター

赤松留美
管理栄養士/健康食育シニアマスター/ライター
36歳まで不健康OLだった経験をもとに、3食しっかり食べて、体型と健康を維持する食事法を提案。年間500名以上にメタボリックシンドロームの方向けの個別栄養サポートを実施。お米を中心にした食事によるダイエット法を伝えるセミナー等も開催

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