栄養指導講座(A・B)

こんにちは!DietitianJob運営会社 東洋システムサイエンスの管理栄養士の徳田です。
今回は2024年5月11日に開催された「栄養指導講座A」と6月1日に開催された「栄養指導講座B」についてご紹介いたします。

本講座は、公認スポーツ栄養士や健康運動指導士などの資格をもち、長年栄養指導に携わっている小池先生をお招きしてzoomを使ったオンライン講座で実施しました。
弊社では小池先生による多数のセミナーを開催しておりますが、この講座は先生の経験した実際の症例を踏まえた講義とロールプレイ研修によって、すぐに役立つ知識と実践練習ができる栄養指導入門・初級講座となっています。

栄養指導A

A講座は診療報酬の算定や栄養アセスメントといった栄養指導に必要な基礎知識、疾病と検査値の関係、検査値から食事問題を予想する3つのパートに分かれており、これから栄養指導を始める方の予習にも、いま携わっている方の振り返りにもぴったりの内容です。

栄養指導に必要な知識

まずは栄養食事指導料の対象となる病態と特別食の種類、外来・入院中に加算を取れる栄養指導のタイミングはいつなのかといった算定の条件をおさらいします。

つぎに、栄養アセスメントです。
栄養指導は医師の指示からはじまりますが、指示内容やエネルギーが患者情報と齟齬がないか、自身でも計算してみて確認する習慣もつようにと教えていただきました。
電カルの押し間違いや見落としで「身体活動レベル普通の180㎝の男性に1600kcal」や「身長の小さい高齢女性に1800kcal」の指示が来た場合、根拠をもって問合せをできるでしょうか。
食事摂取状況の聞き取りの際、患者さんから「この食事でどのくらいエネルギーでしょうか」「1日200kcal減らしたいのですが」と聞かれたときにすぐに答えられることができるでしょうか。
いずれも普段から計算したり、量って感覚を身に付けたりといった練習が必要です。

栄養士は医師からの指示(エネルギーや栄養素)を食材や料理でどのくらいの量・単位になるのか換算し、患者さんが分かりやすいような表現(個・杯・枚、手のひら・にぎりこぶし)にして伝えます。
逆も同じく、聞き取った内容からエネルギーや各栄養素をどのくらい摂取しているのかを推測できることが栄養士の強みです。

この単元の演習では、食材の1食分が何単位にあたるか、1単位で食べられる食品の量とそれをどう伝えるか(ガイドブック・交換表)、3日間の食事記録を見て何が一番の問題点か、改善のための具体的な提案はどうするのかを検討しました。

疾病と検査値の関係

午後は、肥満(BMI・腹囲・体脂肪)、糖尿病・脂質異常症・肝機能・高尿酸血症の検査項目について、その検査数値が示す病態と、基準値から外れるときはどのような原因が考えられるかを学びました。

演習では検査項目のデータを見て、ある程度食事や生活習慣を推測します。
例題を1つ挙げると『BMI22.7 空腹時血糖106 HbA1c7.5』
この数値からは「肥満はない。1~2か月前は血糖コントロール不良であった。直近の血糖値は問題ないが、A1cが改善したか判定するには1~2か月の様子見が必要。最近食事か薬を変えた可能性がある」ことを読み取ることができます。

検査値から食事問題を予想する

実際に症例を用いて、先ほど学んだ検査値からどんな問題点があるかを探っていくグループワークです。
患者さんとの面談の前にデータを見て、どのあたりに問題がありそうか、何を聞き取ってどう指導するかの道筋を立ててから面談に臨むことで、患者さんのお話をしっかり聞き必要な情報を集めることができます。

演習の短時間ではなかなか検査値から生活習慣に結び付けることは難しかったですが、「やっていないことは数値には出ない」先生の経験からのお言葉を踏まえ、研鑽を積んでいきたいと思います。

栄養指導B

B講座はA講座の内容の振り返りとして検査値と食事問題の関連を復習し、行動計画を立てるためのポイント(検査値・食事記録・食習慣から問題点を探して一番重要な問題の対応策を考える)を学びます。栄養士に必要なコミュニケーションスキルを練習するペアワークや、栄養指導の実践として実際にあった症例を使った受講者同士でのロールプレイを行う、やや応用的な内容になります。

A(基礎編)振り返り

事前に解いてきていただいた資料内の練習問題の回答確認と解説から始まります。
「高尿酸血症についての記述で誤っているのはどれか」「健診で以下のような結果が出た。考え方で不適切なものを2つ選べ」といった5択問題で、久しぶりに国家試験を解いたような気持ちになりました。
A講座を受講していない方でも、テキスト内に検査値と食事問題の関係を一覧にしたものがありますので安心して復習から参加いただけます。

行動計画を立てるためのポイント

実習用症例は、先生が実際に担当した患者さんのデータをもとにしています。
初回栄養指導の前にわかっている情報として「年齢性別、身長体重と各検査値、内服薬の種類と既往・家族歴、医師の指示、生活環境」、当日聞き取ったこととして「食事の傾向とご本人からのお申し出内容」が示されていました。

A講座や復習で習ったように、まずはBMI、検査値、服薬や申し送りの内容等から食行動の問題点を推察します。
どんな患者像が浮かび、面談では何を中心に確認するか予め考えておくことで時間を有効に使うことができます。
次に食事記録・聞き取った食習慣と、検査数値との答え合わせをします。その中で具体的な問題点はどこか(炭水化物の重複・夜遅くの食事・朝食欠食・野菜不足・・・)を見つけ、そこから最も重要なポイントを選択します。

栄養士に必要なコミュニケーションスキル

①ガイダンス(指導)②コンサルテーション(相談)③カウンセリング・コーチングの3つに分けて各特長を教えていただきました。
中でも、③のカウンセリングは「相手の気付きや自己決定、行動変容、問題解決、自己成長を支援する」スキルであり、指導に納得いただけない際に多く使われます。

ここではペアワークで「観察」「傾聴」「確認」「共感」のカウンセリングの基本姿勢の練習をしました。
話者や発言内容に対して思い込みやアドバイスをせず、語気の強さ、気持ち用語や独特な言い回しも含め相手が使ったとおりの言葉を使うことを意識して適切に繰り返しながら話を聞くことで「わかってもらえた」という気持ちを生むことができます。
人は、自分のことをわかってもらいたいと思う相手にだから話すんだという先生の言葉にハッとさせられました。
「スキル」なので練習を重ねれば上達できるとの前置きのもと、管理栄養士の立場としてはこれらのカウンセリングスキルを完璧に身に付けるよりも、患者さんにカウンセリングマインドをもって向き合うことが大切ですと仰っていました。

栄養指導の実践

最後に、カルテや問診票患者からの情報収集、指導の際のポイント、栄養指導報告書の書き方、栄養指導の進め方を学びロールプレイ実習を行いました。
2症例を、患者役・栄養士役で各20分ずつ実施します。
ほとんど本番と同じ時間でお話するのですが、皆さん行動目標の設定まで終わらせることができているご様子でした。

参加者の声(一部抜粋。記述は回答のまま)

〇肝機能の検査項目について自信がなかったので勉強になりました。
〇検査値からの食事内容の予測がわかりやすく勉強になりました。一つの検査値ごとに見るのではなく、ほかの検査値との関係性を考えながら食生活を推察していくことで詳しい内容を聞き出す時間ができると今回のセミナーで感じました。
〇とても分かりやすいセミナーでした。診療報酬について改めて分かりました。栄養指導の時に今日学んだことを活かしたいと思いました。ありがとうございました。
〇日々の仕事にとても役に立つ内容でした。特に検査値の見方や、食事内容からどう指導すれば良いか考える授業はとても勉強になりました。最初の問題に参加者が回答するという授業も、間違えてしまった問題もあったので勉強になりました。

ABセットでお受けいただいた方も多く、大変充実した時間になりました。
Dietitian Jobでは今後も栄養士・管理栄養士の皆様の日々の業務に少しでもお役に立てるセミナーを開催していきます。
引き続きご参加をお待ちしております。